リスクマネジメントサステナビリティ
基本的な考え方と課題認識
当社は企業活動に伴うリスクの適確な把握とその防止に加え、発生時の損失の最小化に努めることが、企業価値向上とステークホルダーに対する社会的責任を果たすことと考え、実効性の高いリスクマネジメントに取り組んでいます。
当社の企業活動に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクとしては、操業事故や自然災害による当社設備の損傷、操業停止や工事の遅延、サイバーテロやウイルス感染等による発電所制御システム等への影響などがあります。
また、世界経済の発展やボーダレス化の進展等を受け、格差・貧困、政情不安などのグローバルリスクをはじめとする、昨今の多様化・複雑化するリスクに対しても、適切に対処することが求められています。
当社グループは、社会基盤を支えるエネルギー事業者としての社会的責任を全うするため、リスク管理の高度化に継続的に取り組みます。
リスクマネジメント体制
リスク管理体制
当社は、エネルギーの安定供給をはじめとした重要な社会的責任を果たすために、社長を統括責任者とする実効性の高いリスクマネジメント体制を構築しています。
事業活動に伴うリスクについては、平常時は、業務所管箇所が職務執行の中で管理することを基本とし、複数の所管に関わる場合は、組織横断的に対応の上、適切に管理しています。これに対し、危機発生時においては、経営に及ぼす影響を最小限に抑制すべく、社長を本部長とする緊急対策本部を設置し、迅速かつ的確に対応しています。
また、当社においては、リスク管理部門である財務戦略部を、事業を進める各部門から組織的・構造的に独立させ、健全な緊張関係が保たれる体制を構築しています。
リスク管理委員会、経営執行会議並びに取締役会への報告
統括責任者である社長を委員長とする、リスク管理委員会を四半期ごとに開催し、各部門の管掌役員、監査役、内部監査部、リスク管理部門である財務戦略部及び危機対応部門である総務部をはじめとするメンバーが参加することで、適切なリスクのモニタリングに努めています(下図リスクマネジメント体制図参照)。特に、経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクに対する対応方針、具体的な施策について報告することで、リスクの顕在化の予防に努めています。また、万一リスクが顕在化した場合は、緊急対策本部の対応実績について四半期ごとに必要な報告を実施しています。
リスク管理委員会で議論された内容は、都度、経営執行会議及び取締役会に報告しており、執行役員、取締役及び社外取締役の意見も反映しています。
また、新任の社外取締役に対しては当社のリスク管理体制及びリスク管理手法について説明するとともに、意見交換等を通して、社外取締役の意見も取り入れています。
リスクマネジメント体制図
実効性の高いリスクマネジメント
当社のリスク管理は、「統合リスク管理」、「財務健全性評価」並びに「個別案件の投資評価」を基本に、これらを複合的に機能させて行っています。
統合リスク管理
統合リスク管理については、当社が保有するリスクを「オペレーショナルリスク」「市場リスク」「信用リスク」の3つに定義・分類し、「市場リスク」「信用リスク」から「統合リスク量」の定量化を実施しています。
また、統合リスク量とリスクキャピタルとの差分を「リスクバッファー」として算出しています。
統合リスク管理
リスクバッファーは、発生確率が計算できない不確実性としての「オペレーショナルリスク」を考慮し、一定の水準を維持することとしています。
「オペレーショナルリスク」は、「経営活動への影響度」を縦軸、「発生頻度」を横軸とした「リスクマップ」で管理しています。管理しているリスクに対しては、各々のリスクの種類や特性に応じて、各部門・財務戦略部間で協調しながら当該リスクへの「保有」、「軽減」並びに「移転」等の対策を講じています。
また、「オペレーショナルリスク」のうち、「経営活動への影響度」と「発生頻度」がともに高いリスクについては、「経営で管理する重要なリスク」として特定しています。
四半期ごとに開催するリスク管理委員会、経営執行会議並びに取締役会では、統合リスク量とともに、特にこの「経営で管理する重要なリスク」への対応方針や具体的な施策を中心に議論をしています。
リスクマップイメージ
財務健全性評価
財務健全性評価については、格付機関の格付け手法を用いて、事業計画策定フローの中で長期的な財務格付水準の見通しを評価し、2025年度までは財務格付A格を維持するためのバランスシートマネジメントを実施しています。(P.41財務戦略(CFOメッセージ)「財務戦略」参照)
個別案件の投資評価
個別案件の投資評価については、分野別投資戦略との整合性を確認した上で、金融機関等で投資審査を経験したメンバーを含む「投資評価委員会」等による審査を実施することで長期的に投資適格性が確保できていることを確認しています。
また、定期的なモニタリングの実施と、撤退基準の設定により、リスクの適切な評価、管理を実施しています。
なお、リスク・リターン分析の際には、投資対象国及び事業ごとに算定した200を超えるガイドラインレートを活用しています
投資評価プロセス
大規模災害発生時の対策
国内火力発電所の約半分を保有する当社は、災害対策基本法に基づき「防災業務計画」、「国民の保護に関する業務計画」、「新型インフルエンザ等対策業務計画」を策定し公表しています。また、有事の際に、迅速な意思決定、対応が実施できるよう非常災害対策規程やマニュアル類を整備しています。
昨今懸念されている、首都直下型地震や南海トラフ沖地震、並びに富士山噴火等の自然災害に対しては、国や自治体による被害想定や防災対策の見直しなどを踏まえ、耐震対策を含む必要な設備対策を講じるとともに、大規模災害を想定した訓練を定期的に実施しています。
JERA-BCP訓練では、両株主との情報連携訓練をはじめ、交通途絶や通信不通時等を想定した代替戦略訓練も計画し、常に防災力向上を目指し取り組んでいます。
JERA版BCP・BCMの高度化
当社は、上記の通り、大規模災害発生時の対応体制を整備しています。2019年の火力事業等統合後における当社事業領域の拡大や、経営環境の変化を踏まえ、事業継続性のさらなる向上を目指し、様々な取り組みを進めています。
大規模災害が発生した場合でも、JERAグループの重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い時間で復旧させるために、平常時からのマネジメント活動を強化するため、事業継続マネジメント(以下BCM)規程を定めました。
同規程に基づき、リスク管理委員会の下部組織としてBCM部会を設置し、事業継続計画(以下BCP)の策定・見直しや、災害訓練や事前対策の進捗状況を定期的に確認し、リスク管理委員会に報告しています。
JERA版BCP・BCM基本方針
- いかなる災害・リスク事象の発生においても人身の安全安心を最優先とし、法令遵守を前提に公衆保安を確保します。
- 国内の社会基盤を支えるエネルギー事業者としての責任を全うするため、中核事業である電力/ガスの供給に関する事業を早期復旧・継続し、社会・地域への貢献を果たします。
JERA-BCP・BCMサイクル
新型コロナウイルスへの対応
当社では、設立当初からグローバルな事業活動を念頭に、全従業員へノートパソコンとスマートフォンを配布して、国内外を問わず「いつでも、どこでも」業務を行うことができるIT利用環境を整備してきました。この結果、新型コロナウイルスの感染状況に応じて、テレワークの利用目安を変化させることが可能となり、最大では社員の9割程度(電力の安定供給のために出社が必要な発電所などの従業員を除く)がテレワークを実施しましたが、感染予防対策を実施しながら、安定供給を維持することができました。