財務戦略(CFOメッセージ)IR情報
CFOとしての企業価値向上に向けた取り組み
JERA Americasの財務・経理部門のメンバー
2022年度の振り返りおよび経営目標の進捗
当社は、2019年4月に、2025年度連結純利益2,000億円(期ずれ除き)という目標を掲げ、2022年5月には、規律ある成長と企業価値の最大化を目的とし、収益性、資本効率性、成長性、財務健全性に関する経営目標も定めました。目標に対しての進捗は、総じて順調と捉えておりますが、引き続き、様々な取り組みを進め、目標の達成に向けて全力で努めてまいります。
連結純利益
2022年度はフリーポートLNG基地の火災影響によるLNGスポット調達影響や推定的債務計上等による減益もあった一方で、ロシア・ウクライナ情勢による不安定な燃料市況の中でJERA Global Markets(以下、JERAGM)の欧州を中心とした取引拡大による増益等により、連結純利益は2,003億円(期ずれ除き)を確保しております。
JERAGMによる増益は一時的なものであると捉えており、2023年度以降はそういった一時的利益の減少等が見込まれますが、引き続き、2025年度目標連結純利益2,000億円の達成に向けて、努めてまいります。
シナジー効果
2019年4月に公表した事業計画で掲げた「既存火力発電事業等の統合から5年以内(2025年度まで)にシナジー効果1,000億円以上/年を創出する」とした目標については、2022年度の時点で1,200億円の創出を実現でき、当初目標から1年前倒しで達成することができました。両株主からの当社への資産、事業統合完了から4年経過しましたが、PMI(“Post Merger Integration”)は完全に終了し、今後は2022年に公表した経営目標を実行に移すステージに入ったと認識しています。
バランスシートマネジメント
<総資産>
総資産は、JERAGMにおける燃料数量調整の取り組みにおいて、「デリバティブ債権・債務」として両建てで計上している取引の未決済残高時価影響等により高い水準となりました。資源価格の動向により金額が大きく変動する可能性があるため、今後も注視してまいります。
<有利子負債・純資産>
2022年度は、電力の安定供給に対応するためのスポット調達および資源価格高騰等の影響を受け、営業キャッシュ・フロー回収までの間の運転資金需要が拡大したため、多額の資金調達を強いられました。しかし、短期を中心とした借入や社債の発行に加え、トランジションローンや外貨建て社債を発行する等、資金の確保とともに、資金調達の多様化にも取り組みました。この結果、今後の資金調達基盤の拡充とともに調達マーケットの多角化を実現できたと考えております。
その一方、2025年のNet DERを1.0倍以下という目標を掲げている中、2022年9月末時点では有利子負債が3.5兆円まで増加し、Net DERは1.66倍まで悪化しました。燃料市況が不安定な中、当該状況が長期化するリスクが想定されたため、2022年12月に965億円のハイブリッド社債を発行、2023年3月に2,000億円の永久劣後ローンの借入を実行し、Net DERの改善に努めました。その後、燃料市況も良化し営業キャッシュ・フローも回復基調となったことで、2023年3月末のNet DERは1.01倍まで改善しております。また、資本効率性を示すROICも2022年度実績として4.4%となり、2025年度目標値に迫る水準となりました。
資金の確保と資金調達の多様化に尽力するコーポレートファイナンスを担当するメンバー
新経営目標
経営指標 | 2022年度 | 2025年度目標値 | |
---|---|---|---|
収益性 | 当期純利益※ | 2,003億円 | 2,000億円 |
EBITDA※ | 5,740億円 | 5,000億円 | |
資本効率性 | ROIC※ | 4.4% | 4.5%程度 |
WACC | – | 3.5%程度 | |
成長性 | 投資CF | 3,694億円 | 2022~2025年度累計 14,000億円程度 |
財務健全性 | Net DER | 1.01倍程度 | 1.0倍以下 |
Net Debt/EBITDA※ | 3.7年 | 4.5年以下 |
- 燃料費調整の期ずれ影響は除く。
キャピタル・アロケーション
2022年度は上期と下期でキャッシュ・フローの状況が大きく変化しました。上期については資源価格高騰等の影響による期ずれ差損の拡大を受けて営業キャッシュ・フローは大きく悪化したため、フリ-・キャッシュ・フローは約9,000億円のマイナスという状況でした。下期は燃料市況が良化したことで、2022年度通期では営業キャッシュ・フローが4,500億円程度に改善し、最終的にはフリー・キャッシュ・フローは約800億円のプラスとなりました。
2022年5月公表時点では、2022年度~2025年度までの合計4年間で、営業キャッシュ・フローを中心とした1兆6,000億円程度のキャッシュ・フローは、1兆4,000億円程度のCAPEXに積極的に配分する予定としておりました。直近ではベルギーの大手洋上風力発電事業者Parkwind社の買収や、国内再生可能エネルギー発電事業者であるGPI社への出資を決定するなど、成長と同時に脱炭素に向けた取り組みを積極的に進めております。これらの投資に際しても、健全な財務基盤を維持することを前提に検討した経緯があり、財務戦略目標の存在が効果的に機能した結果と考えております。現時点では、営業キャッシュ・フローおよびCAPEXともに概ね、2022年5月に公表した計画通り推移していると見ております。
中長期戦略の実現に向けて
当社を取り巻く経営環境の変化に気を抜くことはできないものの、目標に対する進捗は総じて順調です。目標達成の確度が高まった段階で次期成長目標を公表する予定ですが、中長期戦略の着実な推進に向け、その柱となる再生可能エネルギー、水素・アンモニア領域中心に、2025年以降も不断の成長投資を行う所存です。旺盛な成長のための資金需要も見込まれまるため、収益性の水準を着実に伸ばしていき、投資から成長へ、そして新たな投資へと循環を紡いでまいります。2025年度以降の財務戦略も検討していき、CFOとして成長投資を支える財務基盤の強化に向けた施策を着実に推進してさらなる企業価値向上を目指してまいります。