CFOメッセージIR情報
2024年度の振り返りおよび2025、2035目標達成に向けて
        取締役副社長執行役員
Chief Financial Officer
(CFO)
酒入 和男
当期純利益
2024年度の当期純利益は、燃料調達価格や期首在庫単価影響の改善があったものの、海外・再エネ発電事業や燃料事業の利益減等により、前年比で2,157億円減となる1,839億円となりました(燃料費調整の期ずれ影響を除いた当期純利益も前年比で49億円減の1,437億円)。2025年度は、国内火力・ガス事業の火災事故影響反動や、海外・再エネ発電事業の増益等を見込んでおり、連結純利益2,000億円(期ずれ除き)の目標に向けて順調に推移していると評価しております。また、2035年度までの達成目標である純利益3,500億円についても取り組みを進めていきます。
バランスシートマネジメント
          2024年度は、有利子負債が前年度比横ばいの約3.1兆円だった一方で、利益剰余金の増加や為替換算調整勘定の増加等から、資本が約3,000億円程度増加し、3.0兆円程度となりました。その結果、財務健全性指標であるNet DERは、前年度に引き続き0.6倍と2025年度目標である1.0倍以下を達成できる水準となっております。
          また、資本効率性を示すROICについては、為替換算調整勘定の増加による資本の増加等により前年度より悪化しておりますが、2025年度目標の4.5%、2035年度目標のROIC-WACCスプレッド150bps以上の達成(後述)に向けて、収益性の向上等に取り組んでいきます。
        
キャピタルアロケーション
2024年度に公表した「2035年までに目指す収支水準・財務戦略」の中で、将来のキャピタルアロケーションをお示ししました。持続的に成長できる企業体を目指し、2024年から2035年までに、LNG/再エネ/水素・アンモニアの3つの戦略的事業領域に対して、累計で5兆円の投資を計画しておりますが、その内訳については、外部環境等を慎重に見極めた上で、柔軟に対応していきます。
資本市場から評価される高い資本効率と強固な財務体質を実現
          私は、前述の「2035年までに目指す収支水準・財務戦略」でお示しした将来のキャピタルアロケーションに基づき、今後の外部環境やエネルギー需給見通しの変化を踏まえて、アジャイルにポートフォリオ構成およびバランスシートの最適化を進めていきます。
          なお、中長期の事業環境変化を見通すことが難しい現状を鑑み、資本効率性については、ROICの実数目標を設定するのではなく、海外のユーティリティ企業やエネルギー上場企業の指標も参考にして、資本コストを意識した資本効率性向上を目指し、2035年度にはROIC-WACCのスプレッド150bp以上を達成することをKPIに設定しました。これらのKPIを実現することにより、持続的な企業価値の向上を目指していきます。
        
    企業価値構造化(未財務価値について)
このたび当社では、サステナビリティ推進会議等の議論を通じて、企業価値向上が、「短期フリーキャッシュフローの最大化」「中長期フリーキャッシュフロー成長率の向上」「資本コストの低減」の3つから構成されるものと整理しました。その上で、成長戦略や財務戦略に基づく施策が直接財務価値を創出するだけでなく、それらを支える取り組みが未財務価値を生み出し、将来的には財務価値につながっていくことを可視化いたしました。
具体的には、JERAが重要課題として位置付けている「マテリアリティ」のうち、事業を支える基盤マテリアリティは、未財務資本を強化しつつ、「潜在成長力の向上」「非価格競争力の向上」「リスク低減」につながっていきます。これらの一連の流れが積み重なって最終的に「中長期キャッシュフロー成長率の向上」や「資本コストの低減」といった財務価値へつながっていくことを示しました。
この取り組みを通じて、社内外のステークホルダーの皆さまに、当社のあらゆる取り組みが企業価値の向上につながっていること、その中で働く一人ひとりの社員の業務が価値創出の源泉であることをご理解いただきたいと思います。併せて、この取り組みをきっかけのひとつとしながら、ステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションの質を上げ、エンゲージメントの強化につなげていきます。
フラットでイノベーティブな風土
不断のイノベーション
最後に、一瞬たりとも立ち止まることなく成長を模索するJERAのCFOとして、イノベーションの浸透を意識して取り組んでいる事例を2つ紹介します。ひとつは、2023年に設立した当社のCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)である「JERA Ventures」の取り組みです。世界のエネルギー問題が大きく変化し不確実性が高まる中で、「Cutting Edgeなソリューション」を提供し続けるためには、スタートアップや大企業、教育研究機関等とのオープンイノベーションが不可欠です。JERA Venturesはその推進役として、①クリーンなエネルギーを実現する脱炭素領域、②お客さまに新しい価値を提供するデジタル領域、③当社グループ全社員の幸福度向上等に貢献するウェルビーイング領域の3領域を対象に、最先端の技術やビジネスモデルを有するスタートアップへの出資および協業活動を行います。総額300百万ドル(約450億円)の投資枠を設定し、設立以来約2年で、計8社のスタートアップ(うち5件がVC)への投資と件のVCへの投資を実行し、新技術・ビジネスモデルの取り込みを通じ、JERA本体とのシナジー創出を目指してまいりました。今後は、事業共創に向けた事業仮説構築の仕組みづくりや技術系スタートアップとの小規模実証実験の場づくりを、社内外のステークホルダーとともに推進していきます。また、スタートアップを起点とした新たな領域へ挑戦する機会提供を通じ、当社グループの次世代を担うイノベーション人財育成にも注力し、革新と組織力の両面から当社の持続的な成長を加速させていきます。
タウンホール
もうひとつ。CFOのミッションとして、様々なアプローチで、オープンでフラットなカルチャーを醸成することを目指しています。JERAは、設立当初と比べ規模も大きくなり、社員数も大幅に増加しましたが、私は、社員一人ひとりと向き合って、直接対話する機会をできるだけ多く持つことを心がけています。直接私の部屋で少人数ランチをとる機会は既に200回を超え、半年に一度のCFOタウンホールを開催し、若手の皆さんから直接声を聞くことを大切にしています。CFOタウンホールは本社、事業部門、海外拠点の若手や、発電所の方々にも参加してもらい、部門間の相互理解形成やJERAが今後チャレンジしていくべき方向性、課題について議論し、若手社員から多くの率直で鋭い意見をもらっています。こうした直接対話を通じ、私自身も大きな刺激を受け、彼らの意見をいかに会社の意思決定に反映させるべきか日々考えていますし、次世代を担う中堅、若手社員一人ひとりが、より強く、魅力のあるJERAを作ることを真剣に考える機会を持つとともに自己研鑽を続け、JERAの一員としてそれぞれの分野のプロフェッショナルを目指してほしいと願っています。