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CFOメッセージIR情報

持続的な企業価値向上を支える経営基盤の強化

酒入 和男

取締役副社長執行役員
Chief Financial Officer
(CFO)

酒入 和男

これまでの10年を振り返って

2025年度、JERAは発足から10年という大きな節目を迎えました。この10年間で、当社は燃料上流から調達・輸送・トレーディング、発電、販売に至るまで一貫したバリューチェーンを構築し、日本最大の発電容量と世界最大級の燃料取扱量を有するエネルギー会社へと成長してきました。

CFOとして振り返るべきことは、財務数値の拡大だけではありません。JERAは、電力の安定供給という社会的責任を果たすため、コロナ禍、ウクライナ危機、中東情勢の緊迫化など、予見が難しい有事においても、燃料調達、資金調達、リスク管理を一体で機能させてきました。特にLNG需給が逼迫した局面では、スポット調達を含め大規模な燃料確保に取り組み、日本の電力安定供給を支えてきました。これは、JERA設立以降に築いてきたバリューチェーン、燃料調達力、財務基盤、金融機関との関係性、市場とのエンゲージメントがあってこそ可能となった対応です。

2025年度の連結業績は、売上収益3兆500億円、当期利益1,836億円※となりました。2,000億円の利益目標にはわずかに届かなかったものの、当期利益は過去3番目の高水準であり、過去7期(両株主からの資産のJERAへの統合が完了した2019年度以降)の累積利益は、計画値を2,164億円上回りました。

また、Net DERも0.5倍程度と高い財務健全性を維持しており、発足10年で築き上げた事業基盤と財務体質を土台に、今後も安定供給、成長、資本効率、将来リスクへの対応を一体で進め、持続的な企業価値向上を実現してまいります。

※燃料費調整の期ずれ影響は除く。

純利益累計の推移

これからの10年に向けて

JERAは発足から10年を経て、次の10年に向けた新たな成長フェーズへと歩みを進めています。今後の10年は、過去10年にも増して、地政学リスク、気候変動、エネルギー需給の変動、政策・制度変更など、事前に予測することが難しいリスクへの対応力が問われる時代になります。こうした環境下においても、JERAはエネルギーの安定供給を担う責任を果たしながら、脱炭素社会の実現と企業価値向上の両立を目指します。その実現を支える基盤が、キャピタルアロケーションと規律ある財務戦略です。

キャピタルアロケーションについては、2035年に向けた成長戦略を実現するため、営業キャッシュフローを中心とした資金創出力を基盤に、戦略的な投資を進めます。当社は2024年度から2035年度までに、LNG/再生可能エネルギー/水素・アンモニアの3つの戦略的事業領域に対して、累計で約5兆円の投資を計画しており、収益性と成長性の両面を重視しながら、「市場環境」や「技術革新」「政策動向」といった事業環境に応じて柔軟に資本を配分していきます。なお、キャピタルアロケーションにおいては、単に成長投資を積み上げるのではなく、不確実性の高い環境下でも安定供給を継続し、財務健全性を維持しながら、将来の成長機会を確実に取り込むことが重要であり、柔軟な資本政策の確保が必要です。

キャピタルアロケーション

2030年代前半に向けて、当社は期ずれ除き当期利益3,500億円、EBITDA 7,000億円を目標として掲げました。特に、中長期の事業環境変化を見通すことが難しい現状を鑑み、資本効率性については、ROICの実数目標を設定するのではなく、海外のユーティリティ企業やエネルギー上場企業の指標も参考にして、資本コストを意識した資本効率性向上を目指し、ROIC-WACCスプレッド150bps以上の実現をKPIとしました。また、財務健全性の維持を前提に、Net DER 0.5倍以下、Net Debt/EBITDA 2年以下を目指し、資本効率と財務規律を一層高めていきます。

2035年度のイメージ

一方で財務戦略の中核は、持続的な成長と財務健全性の両立です。当社は、A格相当の信用力維持、適切なリスク量管理、資本コストを意識した投資判断を徹底し、危機時にも機動的に対応できる財務基盤を維持していきます。特にリスク管理にあたっては、当社が保有するリスクを「市場リスク」「信用リスク」「オペレーショナルリスク」の3つに定義し、統計的に発生確率が計算可能なリスクである「市場リスク」「信用リスク」から統合リスク量の定量化を実施しています。統合リスク量とリスクキャピタルとの差分を「リスクバッファー」と定義したうえで、発生確率が計算できないオペレーショナルリスクの存在を考慮し、一定のリスクバッファーの水準を維持する方針です。

JERAにとって最も重要なことは、リスクをゼロにすることではなく、有事においても電力・燃料の安定供給を継続できることであると考えています。そのため、統合リスク量による財務健全性管理に加え、ストレスシナリオ下でのキャッシュフローや流動性を継続的にモニタリングし、危機時にも機動的に対応できる財務基盤の維持に努めています。

また、将来のリスクに備え、将来キャッシュフロー創出能力を高めるためには、財務基盤だけでなく、事業ポートフォリオ、人財、ガバナンス、技術開発を含めた総合的な経営基盤の強化が不可欠です。JERAは、次の10年に向けて、事業の自立性とグループ最適を両立できる経営体制の構築を進めていきます。

企業価値向上に向けて

足元では、AI・データセンターの拡大に伴う電力需要の増加、地政学リスクの高まり、有事への備えなどを背景に、エネルギー安全保障の重要性が改めて強く認識されています。一方で、これは脱炭素やネイチャーポジティブの重要性が低下したことを意味するものではありません。むしろ、安定供給と脱炭素、自然資本への配慮を両立できる企業こそが、中長期的に社会から選ばれ、資本市場からも評価される企業になると考えています。

JERAは、現実的かつ責任あるエネルギートランジションを進めるとともに、気候変動や自然資本への対応を企業価値向上の重要な要素として位置づけています。

脱炭素、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブへの取り組みは、単なる社会的要請への対応ではなく、将来の事業リスクを低減し、新たな成長機会を創出するための重要な投資であると考えています。

さらに、これらの企業価値向上を支える基盤として、組織・人財・ガバナンス・イノベーションの強化にも継続的に取り組んできました。エネルギー業界を取り巻く課題が複雑化・グローバル化する中、多様な視点を経営に取り込むことが競争力の源泉になると考えています。当社では、社外取締役の拡充や外国籍役員の登用を進めるとともに、専門性の高い人財を国内外から採用し、多様なバックグラウンドを有する人財が活躍できる組織づくりを進めています。私が率いる財務・経理部門内でも、定期的にCFOタウンホールを実施し、本社・事業部門・海外拠点・発電所の若手社員と直接対話し、率直な意見を経営に反映するなど、オープンでフラットなカルチャーの醸成を進めています。

CFOタウンホールでJERA Australiaメンバーへ講演
CFOタウンホールでJERA Australiaメンバーへ講演

また、今後の成長戦略を支える高度専門人財を確保するため、Job型人事制度の導入を進めています。変化の激しい事業環境において、優秀な人財こそが最も重要な経営資本であり、一人ひとりが専門性を高め、より大きな価値を創出できる組織を目指しています。

加えて、事業規模の拡大やグローバル展開に対応するため、取締役会の実効性向上やグループガバナンス強化にも取り組んでいます。JERA本体だけでなく、重要子会社の取締役会のスキルマトリックスの整備や内部監査機能強化を通じて、グループ全体のガバナンス水準を継続的に高めていきます。

当社は、既存事業の競争力強化に加え、新たな技術やビジネスモデルへの挑戦を進めています。従来の延長線上だけでは将来の競争力を確保することはできません。

そのためJERA Ventures(CVC)を通じて世界中のスタートアップとの共創を進めています。低濃度CO₂回収ソリューションの商用化に向けたイノベーションハブのNewlabとの連携や、次世代地熱発電技術を有するQuaise Energyへの出資などはその一例です。スタートアップとの協業や出資を通じ、エネルギートランジションや次世代技術に関する知見を得て、将来の新たな事業機会を創出していきます。

当社はこうした成長戦略、財務戦略、資本配分方針、サステナビリティの取り組みについて投資家、金融機関など資本市場との対話を行うとともに、対話を通じて得られた期待や課題を経営に反映しています。資本市場との建設的な対話を通じて、企業への理解と信頼を深めることが、結果として企業価値向上につながると考えています。

2025年11月 投資家向けカンファレンス(ロンドン)にて
2025年11月 投資家向けカンファレンス(ロンドン)にて
左から、J.P. Morgan Securities LLC Managing Director, Head of North America Credit Research Tarek Hamid氏、Cheniere Energy CFO Zach Davis氏、JERA CFO 酒入

JERAは、これまで以上に次の10年に向けた「安定供給」「成長」「脱炭素」の実現を支える経営基盤を強化し、社会や株主を含む多様なステークホルダーに持続的な企業価値を提供し、更なる価値向上を目指します。