メインコンテンツに移動

産業の高付加価値化へ、官民一体で挑むGXモデルケース

2025.8.25

2025年6月の定例会見でJERAの奥田久栄 代表取締役社長CEO兼COOが語った「産業の高付加価値化に向けた共創」。その構想を具体化する一歩として、同年8月12日、JERAは三重県および四日市市とともに、四日市コンビナートのカーボンニュートラル化に向けた連携協定を締結した*。官民が一丸となるGX(グリーントランスフォーメーション)の事例として、注目を集めている。

*2025年8月12日付ニュースリリース「三重県および四日市市と 四日市コンビナートのカーボンニュートラル化に向けた連携協定を締結

下段左から二人目:JERA 奥田久栄 代表取締役社長CEO兼COO/三人目:三重県 一見勝之 知事/四人目:四日市市 森智広 市長

碧南から四日市へ、アンモニア供給で地域をつなぐ

JERAは、「2050年までに国内外の当社事業から排出されるCO₂をゼロにする」という長期目標「JERAゼロエミッション2050」を掲げている。その実現に向け、発電時にCO₂を排出しない「ゼロエミッション火力」と再生可能エネルギーを組み合わせた、新しいエネルギー供給の形をつくり出そうとしている。

具体的な取り組みの一つが、愛知県の碧南火力発電所で進める燃料のアンモニア転換だ。アンモニアや水素は燃焼時にCO₂を排出しないため、石炭やLNGに代わる燃料として期待が高まっている。

この転換を実現するには、大量の燃料が必要となる。例えば、碧南火力発電所で石炭の20%をアンモニアに置き換えるためには、日本国内の年間消費量の約半分に相当するアンモニアが必要になる計算だ。

JERAはこの大量のアンモニアの一部を、伊勢湾を挟んで近接する四日市コンビナートへ供給することで、同コンビナートの脱炭素化に寄与できればと考えている。四日市コンビナートは国内有数の石油化学コンビナートであり、エネルギーの多消費産業が集積する。今回の構想は、この地域におけるエネルギーの選択肢を増やすものとなる。

12社が参加、共同インフラ整備も視野に

今回の協定には、四日市コンビナートに関わりが深い企業12社が参加している。将来的には、水素やアンモニアを受け入れるための設備を共同で検討していくことが盛り込まれた。こうした取り組みを通じて、地域全体で脱炭素化を進めるとともに、産業の付加価値を高めていくことが期待される。奥田は「水素やアンモニアの活用は容易ではなく、導入にはコストもかかる。そのため、製品の付加価値を高めることをあわせて考えなければ、脱炭素燃料の普及は進みにくい。」と語る。

この取り組みは、環境対策にとどまらず、コンビナートの競争力強化にもつながるものだ。

高付加価値化の第一歩として

今回の取り組みは、単に燃料を切り替えるだけではない。産業構造そのものをより高付加価値型へと転換していく挑戦だ。四日市コンビナートのように多様な企業が集積する地域では、足並みを揃えて進めるには時間を要するが、関係企業が共創することでGX定着を目指す。その一環として、連携企業の本社部門が集まり、コンビナート全体の競争力や付加価値の向上について議論する会議体の設置を検討していく。

この共創は、JERAが描いてきた水素・アンモニアのサプライチェーンを他産業にも展開するという構想を具体化する第一歩でもある。今回のモデルを成功させれば、他地域や他産業への展開も期待でき、日本全体にGXの価値を広げる足がかりとなるだろう。

クリーン燃料による新たな産業連関モデル構築を通じた高付加価値化

奥田社長CEO兼COOコメント

私どもJERAは、日本の電気の約3割をつくっている発電事業者でございますが、2050年に向けまして、発電事業から出るCO2を実質ゼロにするという目標を掲げています。
その実現に向けまして、今、火力発電の燃料を段階的に水素・アンモニアに転換していくプロジェクトを推進していこうとしています。

今回の連携にあたりましては、発電用に調達します大量の水素・アンモニアが導入されることを前提に、一部を四日市コンビナートの皆様にもお届けするなど、色々な検討をさせていただければと思います。

従来の石油を起点としたサプライチェーンに、新しい水素・アンモニアというエネルギー源を加えることで、今までより付加価値の高い製品ができないのかということを、ここにお集まりの皆様と一緒に知恵を絞ってまいりたいと考えています。

脱炭素と産業の高付加価値化、これを軸にして、四日市コンビナートの発展を支えてまいります。