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石炭からアンモニアへ燃料を転換!
アンモニアを火力発電に利用するための世界初の実証試験を開始

2024.3.25

JERAは、碧南火力発電所(愛知県碧南市)にて、大型の商用石炭火力発電機において燃料である石炭をアンモニアへ転換するための世界初の大規模実証試験を2024年3月下旬頃から開始することとし、同13日に報道陣に試験設備を公開した。
JERAは2021年度から、アンモニアを燃料として利用するための技術の確立に向けて、実証事業に取り組んできた。実証試験に必要な設備を導入する工程を短縮し、予定よりも1年前倒しで試験の開始にこぎつけた。

碧南火力発電所。向かって右から2番目の建屋が、実証試験が行われる4号機。

具体的には、発電所4号機(発電出力100万kW)の燃料である石炭の20%をアンモニアに置き換える。石炭を燃やすバーナ全48本に、株式会社IHIが開発した新型ノズルを取り付けることで、アンモニアを燃料として使用することができる。
この実証試験では、安定して燃焼できるか、石炭だけを燃やした時と同様に窒素酸化物の排出を制御できるか、電力需要の変化に応じて燃焼の調整ができるかなどを検証する。実証試験は2024年6月まで行う予定だ。

JERAではその後も、石炭からアンモニアへの転換率を50%以上、将来的には100%まで高めるための課題を探り、シミュレーションを重ねる。

アンモニアを燃焼するためのバーナ。既存のバーナを一部改造している。

オレンジ色の配管から、気体となったアンモニアがバーナに供給される。

今回の実証試験にあたっては約4万トンのアンモニアが使用される。また2000㎥(約1300トン)のアンモニア貯蔵タンク、液体で輸送されたアンモニアを気体に戻す気化器なども発電所内に新設された。

谷川勝哉・碧南火力発電所長は、「これまでも脱硝用にアンモニアを使用していたため、私たちにはアンモニアの取り扱いに知見があるが、火力発電の燃料として、大規模に使用するのは世界で初めて。安全最優先で、燃料をアンモニアに転換する技術の確立に挑みたい」と強調した。大量のアンモニアを火力発電の燃料として利用することは世界初の取り組みだ。アンモニアを漏らすことのないよう強固な安全設計を行うとともに、機器故障や誤操作に備えた未然防止対策を徹底している。さらに、設備の異常を早期に発見する仕組みや被害を拡大させないための訓練・教育、地元の消防や自治体との連携を重ねることで、安全・安心な設備運用を行う。

アンモニアは燃焼してもCO2を排出しない。また、石炭火力発電所の燃料の20%を石炭からアンモニアに転換するには、バーナなど一部を改造するだけでよく、既存の設備を活用できる。実証試験を通じて技術を確立することで、日本をはじめとする世界の火力発電所のゼロエミッション化を実現する。

実証試験のために新設されたアンモニアの貯蔵タンク。アンモニアはマイナス33℃で液化する。タンクの左手に液化したアンモニアを気体にする「気化器」がある。