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電気という当たり前が生まれる場所。火力発電の最前線を見学! イメージ

電気という当たり前が生まれる場所。
火力発電の最前線を見学!

2023.8.23

東京湾に面した千葉県市原市と富津市。両市にはJERAが世界に誇る火力発電所がある。世界最先端の設備が導入された「姉崎火力発電所」と、国内最大規模のLNG(液化天然ガス)基地を有する「富津火力発電所」だ。今回、世界を舞台に活躍するオペラ歌手の田中彩子さんが、JERAのアンバサダーとしてこの2箇所を見学。日本の暮らしを支える火力発電所の最前線に迫る。

最新鋭の発電設備にリプレース!生まれ変わる姉崎火力発電所

2023年6月7日。はじめに向かったのは姉崎火力発電所。火力発電所と言っても、多くの人にとってはあまり馴染みのある場所ではありません。私自身も訪れるのは初めてです。しかし、ここ数年たびたび危惧されている首都圏の電力不足。それを瀬戸際で支えていたのが、まさにこの姉崎火力発電所です。今年も電力ニーズが高まる夏本番が目前に迫り、注目が集まっています。

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姉崎火力発電所が誕生したのは1967年。私の生まれる前から、半世紀以上も日本の暮らしを電力で支え続けてきた場所だと思うと、感慨深い気持ちが込み上げてきます。長い歴史の中でより効率良く、環境性能に優れたものへと進化。そして2023年、新たな3基の発電施設を導入し、今まさに最新鋭の発電所へと生まれ変わろうとしています。

「姉崎火力発電所には1〜6号機までの発電設備がありましたが、老朽化によって2021年に1〜4号機の廃止を決定。夏や冬の電力需要の高まりや不測の事態に備えて5〜6号機は休止としています。一方で3つの新設備を導入し、現在新1号機、新2号機は稼働中。新3号機は2023年8月の稼働を予定しています」

こう話すのは、同発電所の亀井所長。今回のリプレースで、設備1基の発電量や発電効率も大きく向上するといいます。これまで6つの設備で賄っていたものが3つで足りるようになる。発電設備の大きな進化を感じます。

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1基で185万世帯分の電力を発電!環境性能も向上した最新タービン

2023年2月に稼働したばかりの新1号機は、見学時も「ゴォーゴォー」と音を立て発電の真っ最中。建屋内に響き渡るタービンの音は、私たちの声をいとも簡単にかき消し、拡声器やスピーカーなしには相手の声が聞こえないほど!電力を生み出すということが、こんなにも勇ましく、力強いものだとは思いもしませんでした。同発電所の佐賀副所長は新1号機の目玉でもある最新式のガスタービンについてこう話します。

「このタービンは1基で65万kW、実に一般家庭約185万世帯分もの電力を発電することができます。従来のものより発電効率が高いのはもちろん、年間のCO2排出量を3割近くも削減することができます。新2号機、新3号機にも同じタービンが導入され、姉崎火力発電所は大きく進化しました」(佐賀副所長)

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一方、同発電所には旧式の発電設備である5、6号機も残っており、今年も夏冬の電力不足に備え休止状態で待機しています。先程とは打って変わり、物音一つしない広大な空間にある青い巨大な設備。これが5号機のタービンだといいます。

「機械式のタービンでかなり年季の入ったものとなります。見ての通り大きな設備でたくさんの部品が使われていますが、今では手に入らないものも少なくありません。もう作る職人さんがいないのです」(亀井所長)

それはつまり「次に壊れたら直せないかもしれない」ということ。しかし、再び電力が不足する可能性はあります。「その他にも不測の事態に備え、必要な時に安全に再稼働できるよう、専門の技術を持った職員が日々きめ細かなメンテナンスを行っています」と亀井所長は話します。この静かな建屋に、再びタービンの轟音が鳴り響く日が来ないことを祈るばかりです。

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発電所の心臓部!中央操作室はアナログからデジタルへ

発電所には発電設備を24時間、運転・監視するための中央操作室があります。案内された5、6号機の中央操作室は、壁一面に大小様々な計器やスイッチ、コントロールパネルが配置され、古き良きSF映画のセットか、まるで現代美術館の空間展示のよう!

「5、6号室の中央操作室はすべてアナログ操作です。たくさんのパネルやスイッチがありますが、設備の状況の把握しやすさや、誤操作を防止することなど、さまざまな工夫が施されています。新1号機の方は最新のデジタル制御となっており、ぜひその違いを見ていただけたらと思います」(亀井所長)

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新1号機の中央操作室は、以前のものからどう進化しているのでしょうか。より広い部屋に、より多くの機械が並んでいるのか。想像を膨らませながら案内されたのは、一見すると普通のオフィスのような部屋。佐賀副所長は、数台のモニターが整然と並べられた一画を指して話します。

「これがデジタル化された最新の中央操作室です。設備の状況確認人や操作は、すべてこの画面上で行います。たったこれだけのスペースで5、6号機の中央操作室以上の情報を扱えるんです。唯一ある物理ボタンは、緊急停止ボタンです」

これこそ「DPP(Digital Power Plant)」と呼ばれ、世界最新鋭のデジタル発電所として生まれ変わった姉崎発電所の姿。進化とは、何も大きくなることだけではありません。機能性や操作性を向上させつつ、よりシンプル、コンパクトになることも進化の形なのだと再認識しました。

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無駄をなくし、磨き上げた先に生まれる美しさ

姉崎火力発電所の様々な設備を見て回り、最後にふと目に止まったのが、建屋の外壁を這うように敷設された配管でした。「すごく芸術的ですね」とつぶやくと、佐賀副所長はこう答えてくれました。

「そう言っていただけるとうれしいです。でも、見た目の美しさを意識したわけではなく、限られた敷地内に効率的に敷設することや、メンテナンスのしやすさを考えた結果なんです」

副所長はそう言うけれど、私は、重要なポイントを追求した結果が美しいというのは最高の芸術だと思っています。なぜなら、無駄を削ぎ落とし残ったものが美しいというのは、音楽の世界にも言えることだからです。

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国内最大級の発電力!LNGの受け入れも行う富津火力発電所

姉崎火力発電所で新旧の設備を見比べ、火力発電所のダイナミックな進化を実感した私が次に訪れたのは、千葉県富津市にある富津火力発電所。1986年に運転を開始した同発電所は、現在全4系列21軸の発電機を持ち、全体で516万kWもの発電を可能とする、国内最大級の火力発電所です。

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火力発電所であり、国内最大級のLNG基地

今回の見学のポイントとなるのは、同発電所が「LNG(液化天然ガス)基地でもある」ということです。敷地の西側には12基の地下式タンクを保有し、バースと呼ばれる船着き場が設けられ、巨大な船で運ばれてきた大量のLNGを受け入れることができるのです。

「天然ガスは、マイナス162℃まで冷やすことで液化することができ、これを液化天然ガス=LNGと呼んでいます。液体にすることで体積を1/600に減らせるので、輸送効率や保管効率を圧倒的に高められるのです」

こう話すのは、富津火力発電所の河村所長。説明を受けながら広大な敷地内を車で移動すると、窓の外に見えてきたのは薄緑の大きな物体でした。

「このお椀の蓋のようなものが、LNGのタンクです。地上に出ているのはタンクのごく一部。大部分は地下に埋まった状態になっています」(河村所長)

この地上に露出している部分の何倍も広い空間が、私の足元に広がっている!図を見て頭で理解はできるけれど、実感が湧かない……。それくらいLNGタンクのスケールが大きいのです。

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LNGを運ぶ巨大タンカーに乗船!

当日はLNGを積んだタンカーが着桟しており、特別に船内を見学させてもらうことができました。長年、富津火力発電所で働く所員の方でも、まだ乗ったことがないという人も多いタンカー。それだけ貴重な機会をいただいたことに、感謝の気持ちが込み上げてきます。

この船は、オーストラリアから8日ほどかけて富津火力発電所にLNGを運んできたのだといいます。全長約300m、豪華客船と並ぶほど巨大な船は、近づくほどにその大きさに圧倒されます。しかし大きく違うのは、船内のほとんどのスペースがLNGタンクで占められているという点です。

私がバースに着いた時、ちょうどLNGを基地内のタンクへ移す作業が始まっていました。LNGは、バースから船へと垂れるように伸びる「アンローディングアーム」と呼ばれる白いパイプを伝って移されます。船に積まれた4つのタンクのLNGをすべて移すのにかかる時間は24時間!丸1日を要する作業になるのです。

船内ではキャプテンに案内され、操舵室でレーダーやナビゲーションモニター、舵輪など、様々な操舵装置を紹介してもらいました。その後、この船のもっとも高いデッキへ。そこからは船に積まれている真っ白なLNGタンクや、発電所内のLNGタンクエリアまで一望することができ、思わず「すごい……」という言葉が口をついて出ます。普段は絶対にこんな景色を見ることはできない、とても貴重な経験をしているということに感動を覚えながら私は船を降り、姉崎火力発電所、そして富津火力発電所の見学を終えました。

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見学を終えて
「大切なことは何か」本質を捉える取り組むJERA

人生で初めて火力発電所を訪れ、目にするもの、経験すること、何もかもがとても新鮮で刺激的な1日でした。振り返ってみると、姉崎火力発電所も富津火力発電所もどちらも雑然としている印象はなく、むしろ一種のアートを感じるほどでした。すべての設備・装置の形や配置に、そうなっていなければならない理由があり、だからこそ美しさを感じられたのだと思います。

今日様々なお話を伺い、JERAは本質的な部分をすごく大切にしているのだと感じました。それは『電力を安定して供給する』ということ。重視すべきポイントをしっかりと押さえた上で課題解決に取り組むことは、芸術活動においても大切にしなければならない姿勢だと共感します。そして、目指す未来に向けて、JERAは今やるべきことに全力で取り組み、日本の火力発電を進化させ続けているということがよくわかりました。

当たり前のように暮らしの中にある電気が、本当にたくさんの人に支えられて供給されていることを実感するとともに、エネルギーは無尽蔵ではなく、大切に使わなければならないものだと、改めて感じることができました。

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JERAでは今、燃やしてもCO2を出さないゼロエミッション火力発電の実現に向けて全力で取り組んでいる。そこにたくさんの課題があるのは事実だ。しかし、いつまでも現在の火力発電のままではいられない。持続可能な社会を実現するため、そして、いつまでも安定してエネルギーを供給し続けるために、JERAは進化の歩みを止めることなく、進み続けていく。

田中彩子

ソプラノ歌手、Japan MEP / 代表理事
田中彩子

18歳で単身ウィーンに留学。 22歳のとき、スイスベルン州立歌劇場にて同劇場日本人初、且つ最年少でのソリストデビューを飾る。その後ウィーンをはじめロンドン、パリ、ブエノス・アイレス等世界で活躍の場を広げている。「コロラトゥーラソプラノとオーケストラの為の5つのサークルソング」でアルゼンチン最優秀初演賞を受賞。同アルバムは英国BBCクラシック専門音楽誌にて5つ星に評された。
UNESCOやオーストリア政府の後援によりウィーンで開催されている青少年演奏者支援を目的としたSCL国際青少年音楽祭や、アルゼンチン政府が支援し様々な人種や家庭環境で育った青少年に音楽を通して教育を施す目的で設立されたアルゼンチン国立青少年オーケストラとも共演するなど、社会貢献活動にも携わっている。
2020年 Newsweek誌 「世界が尊敬する日本人100」 に選出。2022年10月22日に行われた、日本のプロ野球チームの頂点を決める「SMBC日本シリーズ2022」の開幕セレモニーでは国歌斉唱を務めた。
京都府出身、ウィーン在住。