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次世代に繋ごう。
大学生と考えた「エネルギーの未来」

2023.4.12

小雪舞い散る本日、発電所はフル稼働!

次世代に繋ごう。大学生と考えた「エネルギーの未来」 イメージ

2023年2月10日(金)、時刻は午前10時。南岸低気圧の影響で、関東甲信に湿った空気が流れ込み、天気は下り坂の予報。雨から雪に変わりそうな空模様。

訪れたのは姉崎火力発電所(千葉県市原市)。今冬に予測された深刻な電力ひっ迫を受け、長期計画停止中だった5号機と6号機の運転を再開させ、首都圏の“電力不足を救う現場”として注目された発電所だ。ガスタービン・コンバインドサイクル発電方式を採用した新1号機を今年2月1日から運転開始し、新2〜3号機の営業運転も間もなく始まる。世界最高水準の発電効率を誇るJERAの最新鋭のLNG(液化天然ガス)火力発電所でもある。

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経済産業省からのオリエンテーリング。エネルギー政策を進める上での大原則、「S +3E」(安全性=Safety、安定供給=Energy Security、経済効率性=Economic Efficiency、環境適合=Environment)の話から始まった。

「本日はあいにくの天候で、外気温が低いため電力需要が平時よりも大きくなっています。運転しているのは最新鋭の新1号機と再稼働中の5号機と6号機。電力の安定供給という使命を果たすため、今日はこの3機がフル稼働しています。電気は使用量と同じ量を同じタイミングで発電しなければなりません。そのため、天候によって出力が変動してしまう再生可能エネルギーだけで電気を安定供給するのは難しく、常に変動する需要と、発電側の再生可能エネルギーのギャップを機動的に補完する火力発電の役割が非常に大切です。今日はそんな視点を持ち、エネルギーの未来について考えていただきたいと思います」

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本日の参加者は公募によって選出された20名の大学生。“エネルギーの今”について多角的な見解を伝える時間となった。

こう話すのは、経済産業省の菅原氏。「NEW ENERGY Field 〜生活を支え、未来を生み出す現場体験」と題した本日のイベントは、次世代育成プログラムの一環として、普段なかなか見学する機会のない火力発電所に、公募によって選出した大学生20名を招集し、政府が主導する「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の策定計画とロードマップについて、若い世代に広く認知してもらうために資源エネルギー庁が企画。社会貢献活動方針として“次世代育成”を掲げるJERAが協力し、実現したプログラムだ。

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姉崎火力発電所の副所長より、施設の歴史から、運転開始したばかりの新1号機の先進性を解説した。

JERAのオリエンテーションでは、持続可能な社会の実現・完遂に向け2050年の国内外事業から排出するCO2を実質ゼロにする「JERAゼロエミッション2050」について説明。対話が重なるにつれ、参加した学生もエネルギー業界の未来を“自分事”として捉え、理解を深めているよう。日本の電力供給量の約3割を担うJERAと資源エネルギー庁による共創、その現場の生の声を聞くにつけ、全国から集まった大学生20名の心持ちが変わっていく様子が見て取れた。

フィールドワークで学ぶ、火力発電所の現在地

「これが、新1号機です。火力発電の種類は大きく分けて2つ。1つは蒸気の膨張力を利用して発電する汽力発電で、もう1つは、燃料を燃やした燃焼ガスでタービンを回転させて発電するガスタービン発電です。新1号機では、この両方を組み合わせたコンバインドサイクル発電方式を採用しています。ガスタービンから排出される高温ガスから熱を回収し、蒸気を作って蒸気タービンを回転させることにより、ガスタービンと蒸気タービンの動力を合わせた発電ができます。この発電方法は、従来の蒸気タービンだけを用いた発電と比較しても熱エネルギーを効率よく利用することができ、CO2排出量も少なく、環境にも優しいのです」

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2つのチームに別れ、発電所見学をスタート。参加した大学生たちは皆、普段立ち入ることのできない発電所に興味津々の様子。

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世界最高水準の発電効率を有す新1号機の内部も見学。その心臓部は極秘になっている。

こう話すのは、姉崎火力発電所の新設備を担当する佐賀副所長。新1号機は今年2月1日に営業運転を開始したばかり。

「これまで使っていた1~4号機(1967年12月〜2021年12月廃止)が、新たに生まれ変わり、新設備では、硫黄酸化物や煤塵(ばいじん)を排出しません。さらに、化石燃料の中で単位発熱量あたりのCO2排出量が最も少ない天然ガスを使用することで環境負荷を低減でき、最新鋭の低NOx燃焼器や排煙脱硝装置を導入したことで、有害物質の排出量も大幅に削減できます」と、同氏。

最新鋭設備を見た後は、6号機まである旧発電設備を見学。再稼働中(2023年2月10日時点)の5号機と6号機の「中央操作室」を訪れた。中央操作室は、24時間365日、専門の技術を持った所員が運転・監視をする発電所の心臓部だ。「一度休んでもらうはずだった機械を再び動かしています。火力による電力の安定供給という視点に立つと、まだもう少し頑張ってもらいたい」と、旧設備を担当する猪狩副所長が笑顔で話してくれた。

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姉崎火力発電所の1~4号機は、2021年12月に廃止した。

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再稼働中の5号機と6号機の中央操作室。新1号機はコンピューターで制御するが、ここでは所員一人ひとりがスイッチなどを活用。「常に設備に対する専門性を磨き、小さなキズも見落としません」と運転員。見学中の大学生たちから多くの質問が聞こえてきた。

現在廃止となった1号機から4号機、稼働中の5号機から6号機が設置されている建屋の総延長は、400m超。すでに廃止となった1号機と2号機の「中央操作室」の入り口には、”お別れの横断幕”が添えられていた。

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中央操作室の入口近くに掲げられた“お別れの横断幕”。半世紀にわたって発電を続けてきた1号機と2号機への所員の“愛”が見て取れた。

JERAが考える“次世代の育成”の流儀

午後からはグループワークのスタートだ。今回のワークショップの参加者は、東大クイズ王・伊沢拓司氏率いる「Quiz Knock(クイズノック)」と資源エネルギー庁がコラボレーションした、Webコンテンツ「もしエネルギーがこうなったら模試」(URL: https://moshi-energy.go.jp/)の全7題に回答した学生から選出されている。正解はないけれど、考えると面白い日本のエネルギーの「もしも…」に挑むチャレンジャーだ。

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4チームに分かれ、参加した大学生主導によるグループワークを開始。オリエンテーション、施設見学を経た参加者は皆、それぞれに真剣な眼差し。

4つのチームに分かれ、グループワークを開始。テーマは「カーボンニュートラルとエネルギーの安定供給の実現」だ。カーボンニュートラルとエネルギーの安定供給に向けて2030年の電源構成はどうあるべきで、自分たちはどのようなアクションを取るべきかについて議論。“エネルギーの未来のあり方”を出発点とし、そのゴールを成し遂げるためにエネルギー政策の基本方針 「S+3E」を踏まえながら「必要なこと・乗り越えるべきハードル」をバックキャスティングで考え、エネルギーの未来のために自分たちが貢献できることを話し合い、チームで導き出した結論を発表する。

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グループワークには、伊沢拓司氏(写真中央)も参加。グループディスカッション中、チームそれぞれの議論に耳を傾け、アドバイスしていく姿が印象的だった。

4つのチームはそれぞれに談論風発。グループディスカッション中、伊沢氏の的確なアドバイスを聞くにつけ、参加者一人ひとりのスイッチが切り替わっていく様子が見て取れた。ワークショップ中、活発な議論が展開された。

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1時間半のグループワーク後、今回のテーマ「カーボンニュートラルとエネルギーの安定供給の実現」に向け、導き出した結論をチームごとに発表。皆、表情は真剣だ。

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日本だけがカーボンニュートラルの実現を目指しても意味がない。そんな着想を足がかりに、高度な技術を有す日本がリーダシップを発揮し、「2030年に向けてアジア全域に“エネルギーの政策提言”をすべき」と、結論を導き出したCチーム。

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日本が優位性を発揮できる資源、海と地熱を活用していきたいと考えたBチーム。実装に向けて進めていくべき課題は、地域とのコミュニケーション。地域住民の理解を得るために、どんな話し合いが必要か。若い世代の理解に期待したいと締めくくった。

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エネルギー自給率のアップを起点とし、再生可能エネルギーの全体比率を上げていくことに、「エネルギーの安定供給につながる未来がある」と考えたAチーム。スーパーエネルギー自給大国JAPAN。「このテーマ設定から議論を進めていたけど、経済合理性の視点に立つと、エネルギー問題は簡単ではないことがわかったはず」と伊沢氏。

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議論のスタート時、電力構成から考えたDチーム。経済合理性の視点から原子力発電の比率を30%にした結果、再生可能エネルギーや火力発電の電力比率について、活発な議論が進んだ。経済合理性と安定供給を両立させることの難しさと向き合った。

ワークショップの「締め」として、伊沢氏による総評が始まる。

「今日一日を通して、皆さん一人ひとりに学んで欲しかったのは、“エネルギーの未来のあり方”について複眼的な視点で捉え、難しくとも考え続けていく姿勢です。発表を聞くにつけ、チームそれぞれに個性豊かで独創的なプランだったと思います。他方、ワークショップ中、日本のエネルギー問題を自分事として考えていく中で、チームで掲げたプランをどう具体的なアクションに繋げていくのか、正直「こんなことが可能なのか?」と思えるような大きな壁にぶつかったと思います。掲げた理想を実現するためには多くの困難が立ちはだかり、たくさんの『出来ない理由』を見つけてしまったはずです。それでもなお、多層的な現実を前に立ち向かい続けるしかない。本日皆さんが参加したこの1日、ワークショップを通し、“エネルギーの未来のあり方”について諦めず考えていくという在り方を体得していただけたなら幸いです。」

このように総評する伊沢氏と、JERAが見据える“次世代の育成”に向けた思いには通ずるところがある。

JERAは、持続可能な社会の実現に向けて、次世代育成を社会貢献活動の優先領域の一つとして定めている。これまで、PR・電力館において、小学生親子などを対象に電気について楽しく学べる場を提供し、電気を身近に感じてもらうための発電所のオンライン見学会や中高生ロボコンチーム「SAKURA Tempesta」の活動支援などを行ってきた。2030年までに脱炭素社会の実現を牽引する次世代のイノベーター1,000人の排出を目指す「Green Innovator Project」にも、プロジェクト発足当初からパートナーとして参加している。エネルギーを新しい時代へ導くため、今後もJERAは、事業を通じて培った技術や知見を次世代に継承し、エネルギーの未来を担うグローバルに活躍できる人財の育成に貢献していく考えだ。

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グループディスカッションの発表を経て、それぞれが導き出した結論について、議論を深めた参加者の面々。
中央にいる伊沢氏と一緒に記念写真。