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2023年度下期 定例記者会見 要旨2023/11/29

 当社は、11月29日に奥田社長 CEO兼COOによる定例記者会見を実施いたしましたので、概要をお知らせします。


1. 会見概要
テーマ: ・2023年度冬季の需給対策
     ・「JERAゼロエミッション2050」実現に向けた取組
     ・自由なイノベーション力による新たな価値創造について

配布資料:資料1 2023年度の冬季重負荷期の需給対策について
       資料2 定例会見説明資料
             資料3 燃料アンモニア利用における安全への取り組み


2. 発言要旨(奥田社長 CEO兼COO) 

〇本日、私からは、

(1)2023年度冬季の需給対策

(2)「JERAゼロエミッション2050」実現に向けた進捗

(3)自由なイノベーション力による新たな価値の創造

3点について、お話いたします。

 

(1)2023年度冬季の需給対策

2023年度冬季の需給見通し】

〇はじめに、「2023年度冬季の需給対策」についてお話いたします。資料2の3ページをご覧ください。

〇今冬の予備率は、1031日に開催された経済産業省の「電力・ガス基本政策小委員会」において、東京エリア・中部エリアともに、安定供給に最低限必要な3%を超える確保が示されています。

〇しかしながらJERAは予断を許すことなく、kWkWh両面の確保に取り組み、安定供給に全力を尽くしてまいります。
 

kWの確保対策】

〇まずkW確保に向けた取り組みについて、4ページをご覧ください。

JERAは、最新鋭の火力発電設備へのリプレースを着実に進めてまいりました。これまでにリプレース工事を行ってきた6ユニット・432kWが営業運転を開始しています。

〇さらに2024年に向けて299kWのリプレースを進め、電源の新陳代謝をしっかり図っていくことで、安全確保を万全にしていこうというのが我々の考えです。

〇また、横須賀火力2号機・65kWが来年の2月に運開する予定でありますが、できれば冬のピークに間に合うように、何とか前倒しができないかという指示をしており、現場も交えて検討しているところです。

 

kWh(燃料)の確保対策】

〇続いてkWh(燃料)確保に向けた取り組みについて、5ページをご覧ください。

〇昨年冬季は、欧州や日本での暖冬、中国のゼロコロナ政策によるLNG需要減などの要素が重なり、ウクライナ情勢があったもののLNG市場は混乱することなく、安定的な調達ができました。

〇今冬の見通しとしては、冬季の調達環境を見ると、国内の暖冬予想や欧州の天然ガス高在庫傾向、中国経済の立ち上がりの遅れなどの要因が重なり、需給は緩んでいる状態とみています。

〇しかしながら、LNGの供給自体が増えているということはなく、仮に一つのプロジェクトでLNG生産不調やトラブルが生じるとたちまち価格が跳ね上がるという環境であるため、予断を許すことなく対策を打っていきたいと考えています。

〇中長期的なLNGのファンダメンタルズに目を向けますと、欧州を中心にLNG需要が伸びる一方、至近で運開するLNGプロジェクトはほとんどありません。今後数年間、ファンダメンタルズとしては、LNG需給がひっ迫した状態が続くと見ております。

〇したがって、長期・短期・スポットを上手く組み合わせたLNG調達ポートフォリオを作った上で柔軟性を確保するとともに、JERA Global Marketsを通じた機動的な調達・転売等の最適化により、燃料の安定的な確保に対応してまいります。

〇さらに、今冬から戦略的余剰LNGSBL)の運用が開始されました。6ページをご覧ください。

〇これは、経済産業省から認定されたSBLの供給確保事業者が、12月から2月まで月1隻程度の余剰LNGを確保し、経済産業省が必要と認める時に、LNGを国内事業者に供給するスキームです。

JERA1124日付でSBLの供給確保事業者に認定されました。

〇認定を受けた事業者として、その責務をしっかり果たすべく、SBLのスキームを最大限活用し、日本のエネルギー安全保障に貢献してまいります。

  

(2)「JERAゼロエミッション2050」実現に向けた進捗

【燃料アンモニア20%転換実証の進捗】

〇次に、脱炭素に向けた取り組みとして、「JERAゼロエミッション2050」実現に向けた進捗をお話しいたします。

〇まず私どもの脱炭素のポリシーを改めて申し上げると、JERAの目指す姿は、世界中の全ての人々が、クリーンなエネルギーを、無理のない価格で安定的に使い続けられる世界の実現に貢献することです。

〇この安定供給や脱炭素に向けては、できる限り多くのオプションを持つことが非常に重要です。

〇国や地域によって、経済成長の段階や地理的状況、地政学的な状況が異なるため、それぞれの国・地域に合ったオプションを上手く組み合わせ、安定供給や脱炭素を実現する世界をつくる必要があります。

〇それぞれの国に合う形で、一つの処方箋だけでなく、色々な処方箋を作れるようにオプションを用意していくことが、我々のやるべきこととの発想に立ち、脱炭素の取り組みを進めていきたいと考えています。

〇その一つの典型として、再生可能エネルギーだけではなく、火力のゼロエミッション化やバッテリー事業を組み合わせ、脱炭素・安定供給・経済成長の実現を目指していくというのが、私たちの考えです。

〇本日はその中で、ゼロエミッション火力の取り組みの進捗、バッテリービジネスの進捗についてお話をしたいと思います。8ページをご覧ください。

〇碧南火力4号機の実機を使ったアンモニア20%転換に向けた実証試験は、公表した当時から約1年前倒しとなる今年度内の開始に向け、順調に進捗しています。

〇また安全面についても、ハード・ソフト両面で万全の対策を実施しています。アンモニアは毒劇物に指定されているため、万が一のことあってはいけません。お手元にお配りしたとおり「安全対策パンフレット」も作成し、地域のみなさまとのコミュニケーションを図り、ご理解とご安心を頂きながら、実証試験を開始してまいります。

〇世界初のゼロエミッション火力に向けた取り組みを愛知県・碧南からスタートするということで、地域の皆さまと一緒に実証試験を成功させていきたいと考えています。

 

【燃料アンモニア50%以上転換に向けた進捗】

〇また20%転換のみならず、並行して技術開発を進める50%以上の転換に向けても順調に進捗しています。9ページ、10ページをご覧ください。

IHI、三菱重工、それぞれ、小型炉でのバーナー開発に成功し大規模炉での燃焼試験を行うというステージに入っており、50%以上のアンモニア転換の技術開発も順調に進んでいます。

〇今後、2028年度までに実機による実証を経て、2030年代前半には50%以上の転換による商用運転を目指してまいります。

 

【水素・アンモニアサプライチェーン構築・拡大】

〇つづいて11ページをご覧ください。発電用途での、アンモニアを含む水素系燃料の利用量は膨大であることから、既存のマーケット・商流とは別に、新たに水素・アンモニアのサプライチェーンを自ら構築することに取り組んでいます。

〇これまでに、製造・調達分野では、Yara社、CF Industries社それぞれとの間で、ブルーアンモニアの大規模製造開発および碧南火力4号機向けの燃料アンモニア調達について協業を検討中です。今後のアンモニア利用量拡大に向けて、多くの事業者との協業を進めてまいりたいと考えています。

〇また輸送分野においても、日本郵船、商船三井それぞれとの間で、大型アンモニア輸送船開発を含む輸送方法確立に向けて協業を実施しています。

 

【トヨタ自動車とのリユースバッテリーによる大規模蓄電システム構築】

12ページをご覧ください。本日は、トヨタ自動車と共同で取り組んでいる車載用バッテリーのリユース活用に向けた進捗をお話しいたします。

〇今後電動車の普及により、多くのバッテリー利用が想定されますが、車載用バッテリーは一定期間で寿命を迎え、多くの中古バッテリーが出てくることから、そのリユース・リサイクルが大きな社会問題になることが予想されています。

〇私たちは、それらの中古バッテリーを、電気事業に活用・リユースしていきたいと考えています。具体的には、中古バッテリーでまだ利用可能なものを集め、一定の規模の電池として電力系統に接続し、再生可能エネルギーの導入支援や周波数安定などに使っていきたいと考えています。

〇中古バッテリーは品質が異なるため、安定した電力供給に課題がありました

〇性能や容量の差が大きいリユース車載バッテリーでも、電力系統の需給に合わせて無駄なく安定した充放電ができ、バッテリーシステムにおいて高価であったPCS(パワーコンディショナー)が不要となりコストダウンが図れる技術を活用した、大規模蓄電システムの運用確立に向け、トヨタ自動車と共同で技術開発を進めています。

〇既に四日市火力の中に実証設備を置いており、昨年度には高圧系統への連系ができることを確認し、現在は特別高圧への連系に向けた実証を進めています。

2020年代半ばには、供給電力量約10kWhの導入を目指しています。その後、中古バッテリーが出てくる量に合わせてビジネスを拡大していくことになります。

〇また、これらの日本での取り組みの普及拡大を視野に入れ、国内外で特許を出願し、グローバルな事業展開についても検討してまいります。

 

【アジアとともに、世界の脱炭素を目指す】

〇ゼロエミッション化・バッテリービジネスといった、新しい選択肢を組み合わせたクリーンなエネルギー供給基盤をアジア全体に展開していきたいと考えています。13ページをご覧ください。

〇至近では、

・ベトナムEVN社と脱炭素ロードマップ策定にむけた協業

・日揮HD・インドネシアPLN社と、火力発電CCS導入事業化に向けた共同調査

を開始しました。

〇その他にも、バングラデシュ、タイ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、それぞれのキープレイヤーと一緒になって脱炭素化のロードマップを描き、ともにビジネスを進めることを通じ、アジア全体で脱炭素・安定供給・経済性を両立するモデルの確立に貢献していきたいと考えています。

14ページをご覧ください。2021年に出資したフィリピン・Aboitiz Power社との間では、具体的なOM分野での協業として7月から人財交流を開始しています。

JERAからAboitiz Power社の発電所へ、Aboitiz Power社からJERAの碧南火力発電所へ、相互に3名の技術者を派遣し、ノウハウを学びあうことで、両社の技術力向上を図ってまいります。

〇この狙いは、日本の高いO&M技術や、これから取り組んでいく脱炭素技術を、日本だけでなくアジア全体でシェアし、アジア全体で高い技術力を持った人財を育成し、プールする仕組みを作りたいということです。

〇これを通じて、日本だけではなく、同じ悩みを持つアジアが一体となって脱炭素を進めていきたいという考えで、このプロジェクトを進めています。

 

(3)自由なイノベーション力による新たな価値の創造

〇最後に、「自由なイノベーション力による新たな価値の創造」について、お話しいたします。

〇現代の我々が抱えているエネルギー問題は、従来のやり方の延長線だけでは解決できないものが多く、新しい選択肢を創り、新しい価値を創造していかなければ、これからのエネルギー問題を解決できません。

〇私は社長に就任以来、イノベーションを生み出す風土作りに力を入れていきたいと申し上げてきました。

〇このイノベーションを生み出す風土作りの取り組みについて、2例、ご紹介いたします。

 

Femtech

〇自由なイノベーションを生み出すためには、多様な人財が安心して、幸せに働くことが出来る環境が重要だと考えています。

16ページをご覧ください。当社は、JERA Venturesを活用し、アジア初となるFemtech領域などに特化した「NEXTBLUE 2号ファンド」へ出資しました。

JERAの社員や家族が、Femtechのモニターになることなどを通じ、Femtech領域における技術の育成・普及を後押しするとともに、女性社員に多様な選択肢を提供し、働きやすい職場を作っていきたいと考えております。

〇こうした我々の取り組みに、社外からは大きな反響を頂いています。

1127日には、生理痛を疑似体験するワークショップを、経営層を対象に実施しました。私も生理痛体験デバイスを着用し実際に体験し、こんなに苦しい思いをしながら仕事をしているということを非常に強く実感することができました。

〇経営層が率先して、全ての社員が最大限ポテンシャルを発揮できるような職場づくり、風土づくりに取り組んでまいります。

 

【東京大学先端科学技術研究センターとの協業】

〇また価値創造に向けた取り組みは、社内にとどまりません。17ページをご覧ください。

〇当社はこのたび、東京大学の先端科学技術研究センターと共同で、STEAM教育プログラム「青少年高野山会議」を立ち上げることといたしました。

STEAM教育というのは、科学・技術・工学・数学に芸術・リベラルアーツを付け加えて、理数教育に創造性教育を融合しようという発想です。

〇社内でイノベーション力を高めていくためには、イノベーションセンスを持った、価値創造型の人財がいないとなかなか進みません。

〇先端研の先生と議論する中で、考える力に優れた学生も大切だが、一方で感性も育てないと、バランスの良い価値創造型の人間にはなれないという結論に至りました。

〇一例を申し上げると、実はアインシュタインは音楽でモノを考えていたと言われています。彼は有名なバイオリン弾きでもあり、モーツァルトの研究家でもあったわけですが、相対性理論を作るにあたって、音楽で考えたものを数式にするという発想で新しい価値を生み出しました。また、スティーブ・ジョブズが作ったAppleコンピューターですが、日本の浮世絵をヒントにアイコンを発想したとも言われています。

〇感性的な領域と考える領域をバランス良く育てることが、価値創造をする人間には必要ではないかということに、先端研の先生と話す中で至りました。

〇具体的には一般の学校に通う学生と芸術系の学校に通う学生数十名を高野山に集め、科学技術、社会科学、芸術、哲学等の幅広い分野について学び、体験し、相互にコミュニケーションを図る場を提供します。

〇本プログラムがそうした人財の輩出の一助となり、日本における「イノベーション」や「新たな価値創造」が進展することを期待するものです。

 

〇自由なイノベーションの源泉は多様な人財であり、人を惹きつける魅力のある会社で在り続けることが重要です。

〇私自身が先頭に立って、慣れ親しんだ価値観や既成概念をリセットし、これまでにない唯一無二の価値を創造する好循環を実現してまいります。