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QuizKnockとJERAが共創するエネルギーの未来 難題に挑む次世代人財の育成

QuizKnockとJERAが共創するエネルギーの未来
難題に挑む次世代人財の育成

2025.3.31

持続可能な社会の実現に向けて「次世代教育」に注力するJERA。その一環として2024年8月にスタートした「ゼロエミッションスクール」*では、圧倒的な知力とエンターテインメント性で幅広い層からの人気を誇るQuizKnockとタッグを組み、中高生向けのクイズや動画、ワークショップといったエネルギー教育コンテンツを発信しています。

立ち上げから約半年経った2025年2月には、QuizKnockの伊沢拓司さんと奥田久栄 代表取締役社長CEO兼COOの対談を実施。「楽しいから始まる学び」を掲げるQuizKnockと、「不確実な未来に立ち向かうための学び」を追求するJERAのシナジーとはどんなものなのか。今回は次世代教育に対する想いをそれぞれの立場から語り合ってもらいました。

*「ゼロエミッションスクール」は、JERAとQuizKnockが全国の中高生をメインターゲットとして、2024年8月に開始したエネルギーに関する情報発信プロジェクトです。生活と密接な関わりがありながら学びづらいエネルギーの世界をすこしでも身近に感じてもらうために、学びにつながるエンターテインメントをお届けしています。
https://zero-emission-school.jp/

異なる価値観ごと認め合う、
「自他肯定環境」で学びが変わる

奥田:JERAでは、学生向けの発電所見学やワークショップなどを通じて、社会で活躍する次世代人財の育成に取り組んでいます。昨今活躍の場を大きく広げる伊沢さんは、QuizKnockの活動で全国の学校を訪問されていますが、子どもたちの教育の場で感じることはありますか?

伊沢:どんな学校も特有の価値観があって、評価の軸が固定されていく側面があります。そうすると、ひとつのものさしで陽が当たる子と当たらない子が出てくる。それ自体は仕方のないことですが、社会に出ればもっと多様で自由な価値観がありますよね。なので、僕らが行く時は既存のヒエラルキーを壊して、生徒たちの知らなかった一面が見えてくるような場を作りたいなと。

奥田:既存のヒエラルキーを壊す、僕が社員に向けてもよく伝えていることです。

伊沢:QuizKnockは、学びに対する環境を作りたいんです。勉強を「教える」ことについては、僕らよりも専門である先生のほうが上手でしょう。僕らはそうした先生方の教育がより届きやすいように、モチベーションの部分を担いたいなと。それを作るのが環境の整備だと思うんです。
以前JERAさんと一緒にやったワークショップ*が良い例。ルールとして唯一、「ガチ」ということだけ掲げ、みんなが持てる力を好きに出していい状況を作りました。その途端に、参加者の足並みが揃った。参加者が「ここでは本気で議論していい」と感じて、知ること・知っている内容を表明することを恐れなくなったのだと思います。もちろんこれは参加者の意識が高かったからですが、その場に合わせた適切なルール設定でもって、前向きな姿勢をサポートする重要さを感じました。

*2024年8月〜11月、中高生を対象に実施した「QuizKnockと学ぶワークショップ〜地球温暖化とエネルギー問題を通じて、知って、感じて、考える!〜」。グループワーク形式で、参加者同士やQuizKnockメンバー、講師が積極的に関わり合う中で、「地球温暖化」や「エネルギー問題」について学びを深めることを目指しました。
https://web.quizknock.com/jera_report2024

伊沢:このとき、「ガチ」の定義が何か一つの価値観に固まらなかったことがまた良かった。言いたいことを言い合い、褒め合える環境を参加者が自主的に作っていて、「お前は『ガチ』じゃない」と誰かを否定しなかったのです。自分の価値観も他人の価値観も良し、という緩やかな肯定が流れる場、「自他肯定環境」を作りたいというのは、常々思っています。

奥田:とにかくフラットな関係で、価値観がそれぞれに違うという前提から尊重し合う。お互いにエッジをきかせながらディスカッションをする。これは、人と協働して価値を生み出す上でとても大事だと、僕も共感します。

理解しづらいファクトを、
直感的に楽しく伝えるクイズ効果

伊沢:「ゼロエミッションスクール」は、まさに僕らにぴったりな仕事です。学校では取り扱わないジャンルの学びの場を企業と一緒に作りたいと、ずっと考えていました。その道のプロがいてくれるからこそ、質の高いコンテンツを届けられる。そんな機会を待っていたんです。ありがとうございます!

奥田:嬉しいです。「ゼロエミッションスクール」でご一緒するまで、エネルギー分野にご興味はありましたか?

伊沢:正直なところ、あまり積極的に知ろうとはしていなかったです。だからこそ、このプロジェクトに携わることができて本当によかった。僕ら自身も、企画を通して「これは知らないとまずい」と感じるようなエネルギー業界の現状をたくさん学ぶことができています。

QuizKnockをやっている中でよく聞いてきたのが、「答えのある問題ばかり解いていても、社会課題など答えのない問題には通用しないんじゃないか」というもの。一理あるなとは思いつつ、答えのある問いに取り組む上での手法は答えのない問いにも応用可能で、そういった意味ではクイズも大事かなと。もちろん、シンプルにQuizKnockとして「答えのない問い」に取り組んできた実績もありますし、今後も頑張っていきたい分野です。エネルギー問題などは、まさにこれという正解のない問い。中高生と一緒に僕ら自身も、答えがない問いに向かい合えて、未来志向の取り組みができる。ここに大きな意義があると思います。

もちろん、答えのない問いに対しては、まず答えの出ているところ、データや基礎知識などをしっかり把握することが大事ですから、ここはもう本来のQuizKnock的な領域。「楽しいから始まる学び」だからこそできることですよね。僕らのブランディングとしてもありがたい機会です。

奥田:エネルギー業界では、事業者が未来のために広く世の中に知らせたいと思っている事実がなかなか伝わりにくいという課題があります。「発電方法は太陽光も風力もあるし、これで火力や原子力の発電はいらないな」というのが一般的な感覚。でも、事実はそうじゃない。僕は、事業者がまずファクトを知ってもらう活動をした上で、考えるきっかけを提示していくべきだと思います。

ただ、我々がいくらファクトを羅列しても、見る人は限定されるでしょう。隅々まで丁寧に説明しても、伝わらなければ意味がありません。これが、QuizKnockのコンテンツでは、数秒でいろんなファクトが次々と頭の中にインプットされて、気がついたら結構な知識量になっている。

伊沢:おっしゃる通り、僕らが任されているのはきっかけ作り。最近出たJERAさんとの動画でも、エネルギーの専門的な話はほとんどせず、同時同量(電気のつくる量と使う量が同じ状態のこと)の話をちょっとしたぐらい。でも、視聴者の方が次に同時同量というワードを聞いたときに関心を持てる下地にはなっていると思います。

奥田:僕らがどれだけ努力しても、大勢の人に同時同量の説明をすることはなかなかできないけれど、QuizKnockのセンスと求心力があれば一瞬にしてできてしまう。

実は、僕も初めのうちは、クイズで単に知識を詰め込んでも意味がないんじゃないか、と思っていました。でも、みなさんのコンテンツはただのクイズじゃない。クイズを題材にしたエンタメになっている。そこにちゃんとポリシーや伝えたいこともある、というのが、新しいメディアの形だと感じます。

伊沢:以前奥田さんが、芸術分野から学べることについてお話しされていたのがとても印象に残っています。人に何かを伝える時、最初から論理的にすべてを説明しても、相手の頭には入らない。まず直感に訴えるものがあると、あとに続く話も伝わりやすい。これを聞いて、自分が人に何かを伝える上で欠けていた1ピースを教えていただいた感じがしました。

奥田:考える時は論理的に、伝える時は相手の直感に響くように工夫する。相手や状況によって伝え方は変えなければいけません。ワンメッセージしか伝えることができない場面で何をどう伝えるかというセンスは、アートから学べることが多分にあると思うのです。QuizKnockの動画も同じことで、直感的に楽しめるからこそメッセージが相手の心に響くのだと、僕らも見ていて勉強になります。

ビジーな世の中を上手に無視し、
向き合うべき難問に立ち向かってほしい

奥田:伊沢さんから見て、今の社会に足りていないものはなんだと思いますか?

伊沢:個人が全体に接続されすぎて、本当にじっくり向き合うべき情報に割く時間がなくなっている感じがします。情報が溢れていて、本来一人の人間が抱えられる範囲の関心を飛び越えているなと。いい側面もありながら、世の中がつながりすぎて起こる問題が多い。

情報が多い中でいざ何か伝えようとなると、発信者ははじめから結論を言おうとする。今はどんなコンテンツを見てもイントロがすごく短いですよね。音楽で言えば、すぐにサビが始まるような。学びもそうですが、本来大事な情報はイントロが長い。全体的にビジーになったと感じます。

そんな中で僕は、少なくとも子どもたちには、ビジーな世の中を上手に無視できるようになってほしい、そのためにもっと夢中になれるものを増やしてあげたいと思っています。いい意味で、時間をゆっくり流してあげたいなと。

奥田:時間をゆっくり流してあげる、とてもいい言葉ですね。
たとえば、小説やクラシック音楽のように、時間がかかっても頭から終わりまで鑑賞しないと価値がわからないようなものを、無駄だと否定しているのが今の世界。それで何が起きるかと言うと、じっくり考える時間がなくなり、ストーリーが語れなくなる。ストーリーを語れないと、新しい価値創造ができないと思うのです。自分の頭で時間をかけて考え、ゼロから価値を作る体験が、社会全体から失われている気がします。私たちが未来を担う若者に提供する学びの場を通じて、その力を養ってほしいと心から願っています。

奥田:最後に、次世代を担う若者に対して、そして、一歩先に立つ大人たちに対して、メッセージをいただけますか?

伊沢:若い世代の人たちには、とにかく自分の時間を生きてほしいです。どうしても、他人の価値観・他人の時間が流れ込んでくるけれども、自分の使いたいように時間を使う時期がないと、物事に対する判断軸や自信を得るのは難しいでしょう。他者から隔絶された時間を過ごすことを恐れないで、と伝えたいです。

大人の皆さんには、答えのない問いに挑戦する姿勢を、その背中で、時には言葉で、ぜひ若者に伝えていってほしいです。「難問に取り組むことには価値がある」と若い世代に見せていただけたら、世の中が良い方向に回転していくと思います。ぜひ、ともに難題に取り組んでいきましょう。

エンターテインメントとしてのクイズと、エネルギー事業。まったく異なるフィールドから未来を見据える二人の、次世代教育への想いが響き合う対談となりました。
JERAは今後も、「ゼロエミッションスクール」をはじめとしたさまざまな取り組みを通して、予測困難な未来社会で活躍する次世代人財の育成を推進していきます。

JERA社員向けプログラムとして開催された今回の対談。就業時間中ながら多くのメンバーが集まり、熱心に耳を傾けました。

伊沢拓司

QuizKnockCEO、発起人
伊沢拓司

クイズプレーヤー&YouTuber。1994年5月16日、埼玉県出身。開成中学・高校、東京大学経済学部卒業。「全国高等学校クイズ選手権」で個人としては史上初の2連覇を達成した。2016年にWebメディア「QuizKnock」を立ち上げ、編集長を務めて日本のクイズ界を牽引する。2019年には株式会社QuizKnock設立と同時に、CEOに就任。自身の経験を活かし、講演やYouTubeでの勉強法のアドバイス、企業PR支援などマルチに活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)