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2024年度上期 定例記者会見 要旨2024/05/17

 当社は、5月16日に可児会長 Global CEO、奥田社長 CEO兼COOによる定例記者会見を実施しましたので、概要をお知らせいたします。

 

1.  会見概要
  テーマ: ・2035年ビジョン実現に向けたJERA成長戦略
       ・2035年までに目指す収支水準・財務戦略
       ・JERAゼロエミッション2050の実現に向けて
  配布資料:「2035年ビジョン実現に向けたJERA成長戦略」「2035年までに目指す収支水準・財務戦略」

 

2.  発言要旨
    可児会長 Global CEO
 私からは、2035年ビジョン実現に向けたJERAの成長戦略に関し、
    ・過去10年の経緯と10年後の目標
    ・その目標達成のための戦略
    ・3つの投資分野の取り組み
    ・そして、何が成功のカギを握るのか、をご説明します。

 

P6:発足から10年、計画を継続的に達成。グローバルエネルギー企業への道を歩む
 2014年に東京電力と中部電力は、グローバルエネルギー企業を創ろうと約束をしました。
 その5年後の2019年には、国内外の燃料・火力事業を完全に統合し、世界最大級のLNG買主として、日本の電力の3分の1を供給する一方、脱炭素への取り組みを加速してきました。
 これまで、目標を上回る利益を上げてきましたが、当初の構想から10年経過した今、一度立ち止まり、次の10年の道筋を考えてみました。

 

P7:世界は大きな課題や不確実性に直面。これらはエネルギー問題と密接に関係している
 あらためて、国内外の事業環境を見通すと、ますます不確実性が高まっていく中で、その多くの課題がエネルギーと密接に関係しており、気候変動、貧困、地政学リスクは、まさにエネルギー問題と直結しています。
 これらの課題は、特に今後も成長のハブとなるアジアで解決していく必要があります。一方で日本の経済規模の相対的な低下が見込まれており、日本が世界にどう貢献するのか考えるラストチャンスになる可能性があります。また、社会を変える要因の代表がAIであり、これもエネルギーがカギを握っています。

 

P8:JERAはミッションを日々実践し、世界のエネルギー問題の解決に新しいビジネスモデルで挑む
 こうした課題を踏まえて、JERAはどこに向かうのかについてお話しします。
 我々が一番大切にしているのは、ミッションです。JERAのミッションにある「世界のエネルギー問題の解決」とは、CO2の削減を意味するSustainability、貧困を解消する手頃なエネルギー価格を意味するAffordability、そして地政学リスクなどが発生しても安定的にエネルギーを供給するStability、この3つのエネルギートリレンマを同時に解決することです。
 そして、日々、ミッションを意識して最先端のソリューションを提供しようと行動した将来の姿が、2035年ビジョンです。
 再生可能エネルギーと、その間欠性を補完する低炭素化した火力を組み合わせた新しいビジネスモデルを日本で商業化し、アジアを中心に世界に展開していく姿です。
 2035年に、このビジネスモデルに目途がついていれば、2050年ゼロエミッションの背中が見えてくると思います。

 

P9:3つのSP(戦略的事業領域)と3つのOC(事業運営能力)のコンビネーションで最適なソリューションを提供する
 では、2035年ビジョンに、どうやって辿り着くのか。その戦略のフレームをお示しします。
 まず、JERAは、どこに投資し、どこに投資しないかを明確化し、「LNG」、「再生可能エネルギー」、「水素アンモニア」の3つの戦略的事業領域に投資を絞り込んでいきます。その上で、各投資を、日々の仕事のやり方を高度化することで磨き込んでいきます。
 具体的には、賢く投資し、エネルギーフローを最適化し、保有する資産を安全かつ柔軟に運転する、この3つの事業運営能力を強化します。
 3つの戦略的事業領域(SP:Strategic Positioning)と3つの事業運営能力(OC:Operation Capabilities)で、JERAが提供できるソリューションを増やし、その上で、顧客、地域、国ごとのニーズに合わせて複数のソリューションを組み合わせて提供するというものです。
 

P10:2035年までに5兆円を3つの戦略的事業領域に投資し、連結当期利益3,500億円を目指す
 この取り組みを数字でお示ししますと、今後10年で3つの戦略的事業領域に5兆円を投資し、再生可能エネルギーと低炭素火力の体制を整え、年間3,500億円以上の利益を目指します。
 金利上昇や建設コストの上昇においては、より規律のある投資をすることに加えて、最適化とO&M能力を強化することで、ただ単に投資をする以上の利益をあげることを目指します。また、3つの戦略的事業領域への配分は、状況の変化に応じてアジャイルに調整します。
 

P11:LNG – Integrated Value Chain Playerとして安定供給と高度な需要変動対応を実現。日本とアジア市場にソリューションを提供
 ここから戦略的事業領域ごとの戦略と取り組みを紹介します。
 まずはLNGについては、世界最大級のLNGオフテイク力を梃にして、LNGバリューチェーンの強化、調達と販売フローの多様化、そしてグローバルレベルでのLNGフローの最適化の3つの打ち手を強化していきます。これにより、資源の無い日本向けには、エネルギーの安全保障機能というソリューションを提供しており、ウクライナ危機以降も有効に機能しています。また、アジアを中心に、石炭や石油火力を多く使用している地域に対しては、LNGを導入することで、再生可能エネルギーと合わせて脱炭素を促進していきます。

 

P12:再生可能エネルギー - Center of Excellence(COE)とローカルチームが緊密に協業し風力とメガソーラー事業をグローバルに展開
 次に、再生可能エネルギーについてです。ゼロからスタートし、この5年で500万kW、300名体制のアジアトップクラスのプレイヤーに成長しました。大規模再生可能エネルギー事業は、グリーン水素アンモニアの生産にも活用できるため、JERAのユニークな成長機会だと考えています。
 これについて、3つのStepを踏むことでスケールアップをします。
 既にStep1に取り組んでおり、ロンドンに本社機能を持つJERA Nex(UK)を設立、昨年、ベルギー最大の洋上風力会社Parkwindを買収し、欧州に専門家チームを擁するCenter of Excellenceを構築しています。
 その上で、Step2として、既に国内外で展開している地域に密着したローカルチームをStep1で築いた欧州チームと統合し、GlobalとLocalを融合したGlocal体制を構築します。そして、一定のスケールと、事業エリアの多様性を抱える魅力的な事業体を形成することで、最終Stepでは、グローバルプレイヤーとの提携や統合を模索していきます。

 

P13:水素アンモニア -バリューチェーン構築のFirst Moverとなり、電力需要でインフラを整備し、その他の産業にも脱炭素ソリューションを提供(Multi-purpose initiatives)
 3つ目は、水素アンモニアについてです。
 まず、水素アンモニアというのは、象徴的な言い方で、より正確には、火力を脱炭素化するソリューション全般にチャレンジしようということを考えています。
 その先頭が、碧南火力発電所における石炭火力の燃料アンモニア転換の取り組みです。LNGバリューチェーンと同様に、石炭火力の大規模なオフテイクを梃にして、アンモニアのバリューチェーン構築を目指しています。さらにユニークなのは、構築した水素アンモニアのインフラを、船舶燃料や中小工場向けなど、マルチな用途に向けて開放することで、社会全体の脱炭素化を推進しようと考えています。
 また、水素についても、昨年から米国のガス火力で最大40%の水素導入を開始し、水素バリューチェーン構築に向けた取り組みを開始しています。更には、例えば、既存のLNGバリューチェーンを活用しながら、発電側でCO2を回収し、CCSと組み合わせるなど新しいソリューションにもチャレンジしています。

 

P14:エネルギートランジションは長い道のり。長期的視点と、アジャイルな事業ポートフォリオの組み替えで2035年ビジョンを目指す
 最後に、何が成功のカギを握るのかをお話しします。
 エネルギートランジションは、長い長い道のりのため、長期的な視点が欠かせない一方で、事業環境や新たな技術革新の進展などに合わせて、3つの投資分野の割合を素早く変更できるかが極めて重要です。アジャイルな対応を可能にするのは、柔軟な意思決定メカニズムに加え、事業開発、最適化とO&Mを合わせた3つの事業運営能力、共通した事業運営基盤です。そして、より包括的な視点で言えば、3つの戦略的事業領域を例えば水素アンモニアから眺めると、ブルー水素アンモニアの場合は、LNGバリューチェーンのノウハウや人的なネットワークが、グリーン水素アンモニアの場合は、LNGバリューチェーンに加え、大規模な再生可能エネルギー事業のノウハウと人的ネットワークがフルに活用できます。

 

P15:ミッションと2035年ビジョン実現にはコラボレーションがカギを握る
 こうしたアジャイルな体制構築は極めて重要ですが、その上で、ミッションとビジョンの実現には、他のパートナーとのコラボレーションがカギを握ります。
 3つの戦略的事業領域は、いずれも息の長い大型案件が多く、リスクを分散する上でも、信頼できるパートナーと組む必要があります。パートナーとなれば、40年以上、机を並べて仕事することになるため、どの企業もパートナー選びには極めて慎重になり、国内外のグローバルトッププレイヤーから事業のパートナーとして選んで貰えるかが極めて重要になります。
 また、脱炭素は、民間だけでなく政府とのオープンな対話を通じて、脱炭素に向けた道筋についてのストーリーを共有できるかが大切です。なぜなら、新しくLNGを導入したり、新しいソリューションにチャレンジするにあたって、政府と共通認識を持つことで、長期的な事業環境の不確実性を軽減できるからです。
 こうしたコラボレーションを成功させるには、我々の経験では、2つのことが重要だと考えています。1つは、目的地であるミッションやビジョンに共感してもらえるか、そして、より重要なのは、カルチャーを共有できるかです。JERAは、多様な人財が集まり、オープンに意見を言い合うフラットなカルチャーを大切にしています。JERAは多くのパートナーやステークホルダーと共に、目的地を目指してまいります。

 

私からは、以上です。


 

    奥田社長 CEO兼COO
 私からは、成長戦略を通じて実現すべき収支・財務水準や、脱炭素の取り組みを中心にお話しいたします。

 

P17:従来以上に資本市場から評価される財務体質を実現する
 こちらは、今回、成長戦略とセットで我々が決めた財務目標の一覧です。今般のポイントは、従来以上に資本市場から評価される財務体質を実現することを意識し、財務目標を設定したことです。その典型として、まず資本効率性においては、ROIC – WACCスプレッドを150bps以上、財務健全性においては、Net DERで0.5倍以下、Net Debt/EBITDAで2年以下という目標を設定いたしました。

 

P18:PBR1倍以上を得られる水準の資本効率性と高格付を維持できる財務健全性を両立する財務KPIを設定
 これらの目標設定においては、グローバル市場における競合他社、ライバル企業に引けをとらない評価を資本市場・格付機関から得ることを意識しています。
左側のグラフは資本効率性を示しています。我々のライバルとなる欧州のユーテュリティ各社やオイルメジャーのうち、資本市場からPBR1倍以上の評価を得ている企業は、ROIC-WACC スプレッドで150 bps以上を達成しており、我々もこれを目指していきます。
 続いて右側は財務健全性、格付機関の評価ですが、我々の競合となる企業は、Net DERで0.5倍以下、Net Debt/EBITDAで2年以下という水準を達成し、高格付を得ているのが現状であり、これにしっかり追随していく、あるいは引けを取らない評価を得ていくことが重要であり、先ほどの目標を設定しました。

 

P22:JERAは国内エネルギー分野でもいち早く環境へのコミットメントを発表
 私どもは、2020年10月に「JERAゼロエミッション2050」として、国内のエネルギー事業者としていち早く環境へのコミットメントを発表しました。ここに記載している数値目標は既に公表しており、現在この目標達成に向けて、各種取り組みを進めています。

 

P23:再エネと火力のゼロエミッション化で日本の電力分野の脱炭素をリード
 国内においては、相互補完する再生可能エネルギーの開発と火力のゼロミッション化を推進することで、日本の電力分野における脱炭素化をリードしていく取り組みを進めています。
 まず再生可能エネルギーにおいては、洋上風力を中心に開発しています。火力ゼロミッション化においては、石炭をアンモニアに燃料転換、LNGは水素に燃料転換し、技術動向を見据えて今後はCCS/CCUSも活用する、これらを通じ、火力のゼロミッション化を推進するというのが我々のポリシーです。

 

P24:碧南火力発電所において発電を継続しながらアンモニア転換に必要な工事を実施。NOx、SOxを増加させることなく、アンモニア20%転換を達成
 愛知県の碧南火力発電所において、アンモニアへの燃料転換のプロジェクトを進めており、現在、20%の燃料転換の大規模実証試験を進めているところです。4月10日にフル出力である100万kWでアンモニア20%燃料転換することに無事成功しました。
 また、単に燃焼することができたというだけではなく、転換前と比較し、窒素酸化物NOxは同等以下、硫黄酸化物SOxは約20%の減少を確認するなど、非常に良好な結果も得られています。さらに、欧州などの一部の方から懸念があった、温室効果の強いN2Oについては検出されていないなど、実証試験が非常に順調に進んでいることをご報告させていただきます。
 今回の実証試験のもう一つの成果は、碧南火力発電所を停止させることなくアンモニア転換に必要な工事を実施し、バーナーの取り替えは定期点検中に行って、今回の実証試験を開始することができたことです。電力の安定供給に支障をきたすことがないように、発電所の運営を継続しながら、アンモニア20%燃料転換の実証試験を実現していることも、非常に大きなポイントだと考えています。

 

P25:アジアにおいては、まずLNGの導入拡大が低炭素化を進めるカギとなる
 このように火力のゼロエミッション化と再生可能エネルギーを組み合わせる形でクリーンエネルギー供給基盤を築き、これをアジアにも展開していきたいと考えています。
 ところが、物事には順番があり、アジアではまずLNGの導入拡大をしっかりとサポートすることが重要だと考えています。アジアにはまだ電力の安定供給すら実現していない国がたくさんあります。このような国では、新規に石炭火力を開発するのではなく、代わりにLNG火力を開発できるようにサポートする、それと並行する形で分散型の再生可能エネルギー導入や将来に向けて石炭のアンモニア転換をサポートする、そうした現実的なやり方を提案していくことが、アジアの低炭素化・脱炭素化に早く効果的に貢献できるのではないかと考えています。

 

P26:JERAは多様な選択肢を国・地域ごとの事情を踏まえて最適に組み合わせて脱炭素を実現
 昨日より、国においてエネルギー基本計画の改定に向けた議論が始まりましたので、JERAの考え方をご紹介いたします。
 まず、私どもの基本ポリシーは、多様な選択肢をしっかりと用意した上で、それを国・地域ごとの事情に合わせて最適に組み合わせることで、脱炭素、安定供給、経済性を同時に追求していくことです。ゼロエミッション火力として、水素・アンモニアについてご説明しましたが、これも選択肢の一つという位置づけです。
 参考に100万kWの出力を持つ発電設備に必要な敷地面積を図示しましたが、電源ごとにエネルギー密度は大きく異なります。そのため、国土の広い国と狭い国では選択肢の組み合わせ方法は変わって当然です。こうした実情を踏まえながら、それぞれの国にあったソリューションを提供していきたいと考えています。

 

P27:短期・長期の需給変動に対応できる電源・蓄電池の組み合わせが必要
 加えて、電源を組み合わせる上で重要なポイントは、短期・長期の需要変動に対応できるような電源や蓄電池を、現実的に組み合わせていく必要があるということです。
 下に2つのグラフを描いており、左側は1日の電力需給の変動を示しています。昼間と夜間では電力需要には大きな格差があり、さらに1日の中での天候の変化によっても、需要が大きく変動することがあります。このような短期の需給変動は火力によりしわ取り(調整)を行っているため、起動・停止・出力変動等の回数が増えることから火力発電設備の負担がとても大きくなっています。したがって、蓄電池を最大限導入しながらしわ取りを行っていくなどの電源構成の工夫が必要と考えています。
 一方で、右側の年間の電力需給変動のグラフを見ますと、季節間でも需要は大きく変動します。特に、四季がある日本では冷暖房で電気を使っており、春秋と夏冬で3,000万kW以上と大きく需要が変動します。この需要変動をすべて蓄電池でカバーするには膨大な蓄電池が必要になり、非常に難しいのが実態です。こうしたところは、火力発電設備を起動したり停止したりしながら、大きな需給変動をカバーする必要があります。したがって、安定供給と脱炭素を実現するためにも、火力のゼロエミッション化が必要だと考えています。

 

P29:CO2だけではなく生態系の保全に向けたNOx/SOx低減も重要
 火力のゼロエミッション化を選択肢の一つとして、私どもは脱炭素化を進めていきますが、ここで重要なことは、CO2だけではなくNOx/SOxも徹底して抑制していく必要があることです。
 CO2は気候変動を通じて生態系に影響を及ぼします。一方、NOx/SOxは直接生態系に影響を及ぼすため、より影響度が大きいです。グラフのとおり、日本はこの分野で世界最先端を走っており、その中でJERAは平均よりもはるかに低い水準でNOx/SOxを抑えることができています。この状態をキープしながら、火力のゼロエミッション化として、水素・アンモニアの導入をしっかりと進めてまいります。

 

P30:電力需要の増加の可能性に備えた電源開発計画の見直しを検討
 今回のエネルギー基本計画の改定において、脱炭素とともに非常に重要なことは、今後の電力需要増加の可能性に備えた対応です。今まで私どもは老朽火力のリプレースや電源の脱炭素化への投資を進めてきました。
 しかし、現在ではデータセンターやAIなどのDX電力需要の増加や、半導体などの一部工場の国内回帰に伴う電力需要増加など、電力需要は近い将来増加に転ずることが予見できる環境となっています。そうすると、新規の電源をつくる必要がありますが、事業の予見性が今以上に高まるような制度環境がないと、なかなかつくることができません。
こうした点を国としっかり協議しながら、私どもの電源開発計画も見直し、電力需要の増加に対応していきたいと考えています。

 

私からは、以上です。