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クリーンエネルギーが灯した弘前の夜──弘前ナイターに集った想いと未来

クリーンエネルギーが灯した弘前の夜
──弘前ナイターに集った想いと未来

2026.9.14

2026年6月30日、青森県弘前市の「弘前市運動公園野球場(以下、はるか夢球場)」で、セ・リーグ公式戦の読売ジャイアンツ対東京ヤクルトスワローズが行われました。ジャイアンツ主催の一軍公式戦として青森県で開催されるのは73年ぶり。この試合は、使用電力のCO₂排出量を実質ゼロにする「JERAクリーンエネルギーで灯セ!ナイター」(以下、「CEナイター」)として、「灯セ、みんなで。」プロジェクトの一環で開催されました。実質CO₂ゼロの光はどう灯されたのか。現地の様子や、今回のCEナイターの仕組みを考案した者の声から、弘前の特別な夜の舞台裏をたどります。

実質CO₂ゼロの光で灯されたナイター

試合前、はるか夢球場の正面ゲート付近に設けられたJERAの特設フォトブースには、多くのファンが訪れました。「今日のナイターは実質CO₂排出量ゼロの電力で実施します」というスタッフの説明に、「野球を楽しみながら環境に貢献できるのはいいですね」と来場者。40年来のファンからは「クリーンなエネルギーでプロ野球を続けられるなら、すごくいいこと」、地元ファンからは「環境への意識が野球ファンにも広がるといい」「電気を大切に使おうと思う」といった声が聞かれました。

試合前には、「灯セ、みんなで。」プロジェクトアンバサダーであるQuizKnockの伊沢拓司さんがグラウンドに登場。脱炭素を楽しく、わかりやすく伝えるという使命を胸に、CEナイターの取り組みを紹介しました。続く始球式では果敢な投球が外角に流れ、球場を大いに盛り上げました。

5回裏終了時には、CEナイターを盛り上げる特別企画としてドローンが出現。対戦する両球団のマスコットや「灯セ、みんなで。」の文字が夜空に描かれると、球場内のあちらこちらから歓声が上がりました。そこには、野球の観戦を楽しむという共通の想いのもとに、球場全体が一つになった瞬間が生まれました。

津軽の“風”が秘める再エネの可能性と弘前で
届けたかったJERAの想い

2025年8月、JERAは、英国エネルギー企業bpとJERAの洋上風力事業を統合させたグローバルな洋上風力企業「JERA Nex bp」を立ち上げました。このJERA Nex bpの日本法人であるJERA Nex bp Japan合同会社、株式会社グリーンパワーインベストメント、東北電力株式会社の3社が出資する「つがるオフショアエナジー合同会社」が「津軽の風を日本の力に」を理念に「青森県沖日本海(南側)」の洋上風力発電事業者として、国内最大規模の着床式洋上風力発電所の建設計画を進めています。

青森県は地域の特性上、“風”に恵まれており、その地域特性を背景に、国内でも有数の風力発電導入地域として知られています。JERAグループは、JERA Nex bp Japanやパートナー企業と共に、この地での洋上風力発電の実現に向け、地域の皆さまと手と手を携えながら、運転開始に向けた挑戦を続けています。

今回、CEナイターが開催された弘前市は、この洋上風力発電事業の舞台となる青森県の津軽地方に位置する都市です。この地で開催したCEナイターは、JERAの脱炭素社会の実現に向けた想いや活動をプロ野球の感動や熱気とともにお届けする場となりました。

脱炭素を「自分ごと」に。球場から広がる
共感の輪

「灯セ、みんなで。」プロジェクトの出発点は、「スポーツという身近な分野から、脱炭素への共感を広げていきたい」というJERAの想いです。環境・エネルギー問題は関心の度合いによって、情報の届き方に差が生じやすい領域です。そこで、野球を楽しむ延長線上で脱炭素に触れる機会をつくり、これまで情報が届きにくかった人にも「自分ごと」として受け取ってもらう。難しく見えるテーマを身近に変える力が、スポーツにはあると考えました。

2026年3月の「灯セ、みんなで。」プロジェクト発足の記者発表会で、JERA代表取締役社長CEO兼COOの奥田 久栄は「お互いの価値を最大限に生かし、ファンの皆さまと一緒に持続的でより良い社会を創り上げていきたい」と語りました。また、「環境・エネルギー問題への施策は一企業だけで実現できるものではなく、社会を構成する多くの方々からの共感をもって初めて実現できる」とも。この言葉には、脱炭素が優れた技術や設備といったハード面だけではなく、一人ひとりが「価値に共感する」というソフト面も変わっていくことで前進する、という考えと、その“共感”を身近なスポーツという分野から少しずつ育んでいこうという想いが込められています。

こうした考えや想いを具体的な施策にもつなげています。このプロジェクトは、持続可能でより良い社会の実現に向けて、脱炭素に向けた行動の変化を促す3年間のロードマップをもとに設計されました。初年度は球場でのイベントや特設ウェブサイト、SNSでのファン参加型キャンペーンなどを通じて、野球に関心を持っている方々が環境・エネルギー問題に「気づく・知る」ことを目標に実施。2年目以降は、その興味関心を日常の行動へと少しずつ落とし込んでいけるよう、取り組みや発信を進化させていきます。身近な分野から共感の輪を広げることが、「GXが定着する社会」の実現に向けた一歩となるのです。

実質CO₂ゼロの光を生み出した「バーチャル
PPA」という仕掛け

使用電力のCO₂排出量を実質ゼロにしたCEナイター。その仕組みづくりを主導したのは、企業のGX推進を支援するJERAの100%子会社、JERA Crossです。脱炭素に向けた戦略・ロードマップの策定から電力供給、運用管理まで一気通貫で伴走支援する同社は、どのようにしてCEナイターを実現させたのか、また、それを現実のものにした「バーチャルPPA」はどのような仕組みなのか。その仕掛け人となる同社執行役員CSO兼CCOコンサルティング本部長 藤村 友太氏に伺いました。

Q. CEナイターの仕組みを教えてください。

藤村氏:JERA Crossは、企業のGX支援で培った知見を生かし、セ・リーグ6球団共通のCEナイターの仕組みをつくりました。

その特徴は、試合に必要となる電力から排出されるCO₂を実質的にゼロにしていること。それを実現させたのがバーチャルPPAです。「灯セ、みんなで。」プロジェクトのために福島県いわき市に所在する太陽光発電所「JERA×セ・リーグ みんなのソーラーパーク」を整備し、そこで生み出された再生可能エネルギーの環境価値、つまり「CO₂を排出しないことに伴う価値」を各球団へ配分。各球団は、その環境価値をナイターで使用する電力に付加することで、CO₂排出の実質ゼロを実現しています。なお、この太陽光発電所で発電された電力そのものは電力市場で販売されます。この一連の仕組みがバーチャルPPAです。

Q. 電力を脱炭素化する手段は複数あると思いますが、なぜバーチャルPPAを選んだのでしょうか?

藤村氏:バーチャルPPAにより、社会全体の脱炭素化に貢献できると考えているからです。CEナイターの仕組みでも説明した通り、バーチャルPPAでは基本的に各取り組みに応じた再生可能エネルギーの発電所を整備し、電力と環境価値を新たに創出します。これを私たちは創電と呼んでいます。これにより、社会に新たな再生可能エネルギーが生み出されることになるため、脱炭素化に貢献することができるのです。単に、既存の再生可能エネルギーの電力と価値を用いるのでなく、新たに生み出した電力と環境価値を用いるというところがポイントです。

今回の取り組みでは、プロ野球ファンや地元の皆さまに環境・エネルギー問題への取り組みを発信することも重要な目的でした。そのため、環境価値の購入によるCO₂排出量の削減だけでなく、再生可能エネルギーの普及そのものにも貢献できる点を重視しました。

また、プロ野球球団には、自前で球場を所有していないケースや、球場に再生可能エネルギーの発電設備を新設するスペースがないケースもあります。そこで、球場の所有者や立地を考慮しなくてもよいように、球場とは別の場所に発電所を設ける「オフサイト形式」を採用。さらに、現在の電力契約を変更せずに環境価値のみを取得できる「バーチャル形式」とすることで、各球団が少しでも取り組みやすい仕組みを目指しました。6球団それぞれの事情を考慮し、環境・エネルギー問題への貢献と情報発信の効果の両立を実現しました。

Q. CEナイターの仕組みを構築するうえで苦労した点はありますか?

藤村氏:「灯セ、みんなで。」はセ・リーグとの共同プロジェクトのため、6球団すべてが無理なく導入できる仕組みとし、目指す方向を一つにして歩みを進める必要がありました。

その中で特に難しいと感じたのが、各球団の事情や条件を踏まえて設計することです。例えば、ドーム球場と屋外球場では使用電力量が異なってくるため、バーチャルPPAで生み出した環境価値をどのように配分するか繰り返し検討を重ね、すべての球団に納得いただく形となるよう議論しました。また、球場によっては、すでに再生可能エネルギーの電力を導入しているため、開催球場や運用方法についても配慮しながら球団の皆さまと検討を重ねました。

当社においては前例がない取り組みでしたが、セ・リーグの各球団や関係者の皆さまの取り組みに対するご理解やご協力もあり、当社の経験もフルに活用することで実現にこぎつけることができたと感じています。

Q. CEナイターを通じて、どのような想いを届けたかったのですか?

藤村氏:当社のミッションは「脱炭素をコストから価値へ」です。国内では、脱炭素は依然として取り組みにかかる負荷やコスト面が注目されやすい状況かと思います。しかし、本来の脱炭素は、新たな事業機会の創出や企業価値向上につながる大きな可能性を持っていると考えています。欧州では、脱炭素に取り組む商品やサービスに対して消費者が自ら進んで価値を見出し、選択する行動が広く浸透していますが、日本ではこれからの段階です。脱炭素を負担から価値に変えていくためには、まず多くの方にその意義を知っていただき、価値を感じていただくことが欠かせません。

そのきっかけとなる大切な場が、スポーツやエンターテインメントの分野だと考えています。野球を例にすると、応援している球団が脱炭素に取り組む姿勢を感じ取ることができれば、ファンの皆さんの意識や行動変容にも比較的容易につながっていくのではないかと思います。まずは「脱炭素の取り組みが身近な場や分野で進んでいること」に気づいてもらうこと。そこから徐々に、省エネやゴミの分別といった一人ひとりの行動変容につながり、将来的にクリーンな環境で満たされた社会が実現していくことを願っています。

応援して、知って、シェアする。その先にある
未来

JERAとセ・リーグが挑む「灯セ、みんなで。」プロジェクトの歩みは、着実に前へ進んでいます。実質CO₂排出量ゼロの光で弘前の球場を灯したことも、その確かな一歩となっています。2026年シーズン、セ・リーグ6球団がそれぞれの主催試合で1試合ずつCEナイターを実施していくように、一つひとつの積み重ねの先に、脱炭素・GX社会の定着に向けた道は続いています。

「灯セ、みんなで。」プロジェクトアンバサダーを務めるQuizKnockの伊沢さんは、弘前でのCEナイターをこう振り返ります。

「これだけ明るい球場の光を実質CO₂排出量ゼロで灯せているということのすごさを、現場だからこそ体感できました。球場を埋めつくすほどのファンの皆さんと一緒に経験できたことにはすごく価値があったと思いますね。僕の話を聞いた人がさらに誰かに伝えたくなるような、面白いこと・興味深いことを、これからもガンガン伝えていきたいです!」

応援して、知って、みんなでシェアする──その小さな行動一つ一つの先にも、次の世代へ手渡せる未来があります。

野球ファンとともに、地域とともに、一歩ずつ。脱炭素が特別なことではなく当たり前になった「GXが定着する社会」に向けて、JERAはこれからも挑み続けます。