役員人事発表 記者会見 発言要旨2023/02/22
■佐野会長
私からは、本日の取締役会での決議内容である役員人事について、ご説明させていただきます。
(決議報告)
4月1日付で、
・私(佐野会長)が会長を、
・社長の小野田が社長を、それぞれ退任し、
・副社長の可児が、会長 Global CEOに、
・副社長の奥田が、社長 CEO兼COOに、
それぞれ就任することを決議いたしました。
(交代の背景)
まずはじめに、経営トップ交代の背景についてお話いたします。
2019年の会長就任以降、小野田とともに、既存火力事業のスムーズな統合に注力してまいりました。これは、26箇所の火力発電所や、3,000名を超える従業員を、ひとつの組織に統合するという、電力業界では例のない大規模統合でありました。
この統合は無事完了し、社内に出身母体を気にする雰囲気は一切なくなりました。さらには、海外拠点における現地採用の拡大、様々な専門知識や経験を有するキャリア採用社員も増え、昨年4月にはJERAとして開始した新卒採用社員も入社するなど、当社は「自立的な経営」を実現しております。
こうして、既存火力統合を無事終え、今後、企業として新たなステージに向かっていくこのタイミングで、小野田と相談のうえ、新たなトップに経営の舵取りを任せるべきと判断し、交代を決定いたしました。
(選任理由および共同CEO体制)
続いて、「選任理由」および「共同CEO体制」についてご説明します。
ロシアによるウクライナ侵攻後、エネルギーを取り巻く情勢は 激変し、足元では安定供給の確保が最重要課題として再浮上しました。一方で、中長期的な脱炭素化の必要性は、さらに高まっております。
こうした課題を解決するにあたっては、資源獲得競争といった「海外」という文脈と、電力自由化の中での安定供給といった 「国内」の文脈の両方から問題解決を考えていかねばなりません。
短期と中長期、海外と国内、と、各種経営課題を同時解決し、当初からの目標である「グローバルなエネルギー企業」へと成長していくためには、強力な執行体制が必要であると判断しました。
このため、可児と奥田のそれぞれの強みを生かし、相互補完関係を確立する、「共同CEO体制」を敷くことといたしました。
可児は、海外における資源確保、エネルギー事業開発、海外現地法人トップ等の豊富な海外経験を有しています。
足元において激化するエネルギー資源確保と、世界各地で同時に進行する脱炭素の動きを的確に連係し、グローバルな目線でパートナーとの関係を形成、グローバル経営体制を構築できる人材であると確信しています。
奥田は、電力会社における経営企画の経験をベースに、他社とのアライアンス等、従来の企画の枠を越えた多彩な経験を有しています。
国内の電力システム改革、エネルギー安定供給確保、エネルギー業界における脱炭素議論をリードできる人材であると確信しています。
統合交渉から10年間タッグを組み、互いの異なる強みを活かし、当社の中枢を担ってきたこの二人に、共同でこの会社の「舵取り」を任せていく考えです。
■小野田社長(佐野会長による代読)
本日の取締役会において、新トップに経営を託すことを決定いたしました。
社長に就任した2019年以降をふりかえると、安定供給の確保と脱炭素化の推進を両立するという、非常にチャレンジングな課題に挑み続けた4年でありました。
電力自由化が進む中、ロシアによるウクライナ侵攻後の資源獲得競争の激化という難局に直面しましたが、休止火力電源の再稼働やLNGの大量確保といったあらゆる経営努力を重ね、安定供給に最大限の努力をはらってまいりました。
また、2020年には「JERAゼロエミッション2050」を公表しました。国内最大の発電事業者として、チャレンジングな目標となる2050年のCO2排出実質ゼロという挑戦を掲げ、さらにはそれに向けたロードマップを策定いたしました。
多くの課題がありましたが、ここまで来られたのも、地域社会や事業パートナー、関係行政のみなさま、役員や従業員など、多くの方々のご理解とご協力の賜物であると、深く感謝申し上げます。
可児、奥田は、今後の「グローバルなエネルギー企業」を創り上げるステージにおける、JERAの経営を託せる人材として、まさに適任であると私も確信しています。
彼ら二人は、ともにJERA設立の立役者であり、今までそうしてきたように二人の異なる持ち味を活かし、どんな困難にも二人が連携して乗り越えることができるものと信じております。
今後とも、ステークホルダーのみなさまにおかれましては、可児、奥田を共同トップとする新経営体制を、何卒お引き立て頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。
■可児副社長
このたび、会長 Global CEOへの就任について決議を頂きました可児です。
約10年前に、奥田と、日本にグローバルエネルギー企業を創ろうと約束しました。多くの先輩や仲間と全速力で走ってきましたが、今回、我々二人がJERAの舵取りを任され、奥田と改めて初志を再確認したところです。
幸いJERAには、目指すべきミッションとビジョンがあります。
『世界のエネルギー問題に、最先端のソリューションを提供する』
このミッションは、我々の存在理由です。私は、迷ったときに、このミッションに立ち返るようにしています。
そして、水素・アンモニアを活用した火力発電と、再生可能エネルギーを組み合わせることで、日本から、世界を脱炭素社会に変革するというビジョンを掲げています。
私は、このミッション、ビジョンの達成に向けて、主に3つのことに力を入れていきます。
・グローバルな視点で、J ERA全体の最適な仕組みを構築すること
・その仕組みに魂を入れるためにチームビルディングをすること
・そして仕組みとチームが車の両輪となり多様性を大切にするフラットなカルチャーを育てることです。
ミッションにある『世界のエネルギー問題』とは、クリーンな社会の実現に向けたsustainability、価格を下げるaffordability、安定供給のstabilityをどうやって同時に達成するかという問題だと思います。そして、ロシアのウクライナ侵攻以降、エネルギー問題は、グローバルなコンテキストでソリューションを考えないと、問題が解けないことが、改めて明白になりました。
では、資源の無い島国の日本で、我々JERAができることは何か。
まずは、世界最大級のLNG調達力をレバレッジにして、ガス田開発、液化事業、輸送事業、LNG基地、ガス火力まで、LNGバリューチェーンを構築することで、国内外の不測の事態に即応できる、日本にとっての「保険」機能を備えます。
その上で、太陽光、陸上風力、洋上風力などの大規模な再生可能エネルギーの開発、更には、水素アンモニア・バリューチェーンの構築を進め、バランスの取れた脱炭素社会への移行を目指します。
不確実な将来に備えるために、LNG、再生可能エネルギー、水素アンモニアの3本柱を育て、2030年の時点で、エネルギー問題の解決に向け、一つでも多くのオプションを構築しておきたい。そして、例えば、LNGだけとか、洋上風力だけ、という単品を押し付けるのではなく、地域や国の事情に適した複合的なオプションを組み合わせることで、『最先端のソリューションを提供』できるようになりたいと考えています。
もっとも、エネルギー問題を解決する一つ一つのオプションを構築するには、相当な時間がかかるだけでなく、リスクが大きく、莫大な投資資金が必要となります。とても一社でできるチャレンジではありません。国内外のトッププレイヤーから、事業パートナーとして選んで貰えることが、極めて重要です。
パートナーとして選んで貰えるか、また、社員に選んで貰えるかは、会社のカルチャーが鍵になります。多様な人財が集まり、アイデアを出し合い、クイックに決断し、チームで動く。壁に直面しても、このプロセスをアジャイルに繰り返していく。多様性を大切にしたフラットなカルチャーが根付いた先に、ビジョンの達成が見えてくるのだと考えています。
正に、言うのは簡単、実現するのは極めて難しいミッションです。それでも、10年前には、多くの人が、JERAという会社を実現できるとは思っていなかった、そんな状況で、奥田とタッグを組み、多くの人に支えられてきました。日本から世界の脱炭素化をリードするグローバル企業を創る挑戦を続けていきます。
■奥田副社長
このたび、社長 CEO兼COOへの就任について決議を頂きましたので、私からも一言ごあいさつ申し上げます。
私からは日本から見たエネルギー事業の課題とその克服について、お話しいたします。
まず日本の課題ですが、「どんな情勢下でもクリーンなエネルギーを安定的、経済的にお届けできる新たな基盤を創ること」にあると考えています。
その際、資源の少ない国であり、また再生可能エネルギーのポテンシャルにも恵まれていないことを踏まえて、可児の申し上げた通り、新たな基盤には多様な選択肢を用意することが必要です。
JERAはそれをリードしてまいります。
その中でも、当面、特に力を入れてやるべきことが三つあります。
一つ目は「ゼロエミッション火力の実現」です。
まずは既存火力に水素・アンモニアを混焼することから始め、2030年代には混焼率を確実に50%以上、さらに2040年代には ゼロエミッション火力にリプレースしてまいります。
来年度末に碧南火力でアンモニア混焼20%の大規模実証を行います。これは、実用化・商用化に向けた最後の試験です。
成功すると確信しており、世界初のエポックメイキングなイベントになると期待しています。
二つ目は、有事にも強い供給基盤を構築することです。
その実現に向けて発電所のリプレースを確実に進めるとともに、非常時にも柔軟かつ確実に燃料が調達できるスキームを関係者と協調して構築いたします。
足元は需給ひっ迫と電気料金高騰でご負担をおかけしておりますが、これらの取り組みを進めることで、その負担の軽減に貢献してまいります。
三つ目はデジタル技術を活用した新しい価値の提供です。
電気はこれまでkWおよびkWhで量って売るという、量り売りでした。しかし、安定供給、脱炭素、経済性を高度にバランスさせる新しい需給基盤を構築するには、それに加えて、環境価値はもちろん、短期から長期に至るまでの様々な需給変動に対する柔軟性などを価値にして届ける仕組みが不可欠です。
こうした取引はデジタル技術を活用して初めて、その価値を計測し、取引できるものです。
JERAは再生可能エネルギーやゼロエミッション火力を通じて、多様な価値を社会に提供していくことになります。このため、その価値を公平、公正に取引できるデジタルプラットフォームについても率先して構築してまいりたいと思います。
今、当面特に力を入れていく三点について申し上げましたが、これらの価値を届けるための大前提に、安全で災害に強い現場がなくてはいけません。
従来電力会社が培ってきたノウハウを、デジタル技術等も活用してさらに発展させて、グローバルで見ても最高レベルの安全、防災、強靭性を有した現場を作り上げたいと思います。
最後に忘れてはならないのは、日本の問題を解決する選択肢は、世界との連携があって初めて実現できるということです。
水素やアンモニアは、グローバルなサプライチェーンを構築して初めて、日本で発電用燃料として使用することが可能となります。
その意味でも、可児としっかりと連携をとりながら経営の舵取りをしてまいります。
可児とは足掛け10年の付き合いですが、私は日本人で彼以上にグローバルな行動力のある人間を知りません。私にはないその能力を全面的に信頼するとともにリスペクトしています。
これまで同様、強固な相互補完関係のもとで、日本そして世界のエネルギー問題を解決し、企業価値を高めてまいります。