データドリブンカンパニーへの変革
デジタルパワープラントプロジェクト

Project

Introduction

これまでに蓄積したナレッジを形式知化し、不具合の予兆を自動で検知する。発電所の運転を遠隔で管理できる。遠く離れたメンバー同士が、同じ場所にいるかのようにコミュニケーションが取れる。発電所の仕事は、大きく変わろうとしている。発電所運営を変革するデジタルパワープラントは、新たな働き方を実現し、さらなる価値創造を目指す、JERAのDXプロジェクトだ。この一大チャレンジを牽引する4人のメンバーに、ここまでの道のりとプロジェクトに込めた想いを聞いた。

  • O&M・エンジニアリング戦略統括部
    デジタルパワープラント推進部 部長

    1994年入社 機械工学専攻

    手川 典久

  • O&M・エンジニアリング戦略統括部
    デジタルパワープラント推進部
    総括ユニット ユニット長

    2006年入社 機械工学専攻

    足立 貞雅

  • O&M・エンジニアリング戦略統括部
    デジタルパワープラント推進部
    予兆管理ユニット

    2004年入社 電気工学専攻

    島添 道裕

  • O&M・エンジニアリング戦略統括部
    デジタルパワープラント推進部
    予兆管理ユニット

    2015年入社 情報理工学専攻

    安田 和樹

※情報は取材当時のものになります。

Project 01

発電所の「働き方」を革新する。

2020年10月、JERAはO&M・エンジニアリング本部内にデジタルパワープラント(DPP)推進室を設置し、「デジタル発電所」への変革を推進していくことを宣言した。発電所のすべての設備と働く人のデータをリアルタイムで可視化・活用する「デジタル化」と、よりよい価値を実現していく「Kaizen力」、さらに、これまで培ってきた「技術力」を掛け合わせることで新たな価値を創造していく、かつてないスケールのプロジェクトだ。同プロジェクトの責任者を務める手川典久は、その概要を次のように話す。

「本プロジェクトは、発電所の働き方を変革するための全社プロジェクトです。経営陣の強いコミットメントのもと、本社・発電所の技術者が一堂に会し、最新のテクノロジーを駆使したソリューション開発が進められました。『人とテクノロジーとデータを掛け合わせることで、新たな働き方を実現し、さらなる価値を創造する』という『ありたい姿』を描き、それを実現するためのアプリケーションをアジャイルに開発していく。発電所の常識を覆す革新的なプロジェクトであると自負しています」

JERAが蓄積してきた運用に関する知見を形式知化し、トラブルの予兆管理などを自動化すること。そして、設備や市場の情報をリアルタイムで可視化し、より迅速な意思決定を可能にすること。そうすることで、プラント運用に携わる技術者の仕事は、劇的に変化する。データの収集や分析に時間を費やす必要がなくなり、プラント運用の高度化と価値創造に注力できるようになるからだ。DPPの実現は、まさに革新。これまでに数々のビッグプロジェクトに参画してきた手川も、気持ちの昂ぶりを抑えられなかったそうだ。

「この計画が公表された時、私は海外の発電所で仕事をしていました。これは、JERAのかつてないチャレンジだ。プロジェクトが公表された瞬間の興奮は、今でも忘れることができません。

それから1年の時を経て、私はこのプロジェクトの責任者を任されることになるのですが、当時は、そんな機会をもらえるなんて想像もできなかった。実際にアサインが決まった瞬間は、かつてないプロジェクトに関わることのできる喜びを感じるとともに、重責に背筋がピンと張り詰めましたね。必ず成果を出してみせる。そんな強い想いを抱いて、帰国の途についたことを覚えています」

Project 02

そのソリューションは、技術力の証明だ。

発電所の仕事を革新するソリューションの数々。それらは、JERA社内の変革にとどまることなく、国内外の顧客にも提供されている。すでに2018年から導入・提供を開始している「予兆管理サービス」はその象徴的な事例だ。サービスの内容は、クラウドを活用し、遠隔にて発電所の運転データをリアルタイムに分析することで、トラブルの予兆や熱効率低下を検知できるというもの。DPPプロジェクトでは、新たにグローバルデータアナライジングセンター(G-DAC)が立ち上げられ、サービスを24時間化することが決定。国内外の顧客に対する「予兆管理サービス」の提案・提供から、G-DACの業務検討まで、幅広い役割を担っている島添道裕は、このサービスの開発者でもある。

「DPPプロジェクトを契機に、自らが開発に携わった『予兆管理サービス』が、その可能性をさらに広げていく。これまでにやってきた仕事が認められたような気がしましたし、こうした機会を与えられたことを心からうれしく思いました。このサービスをよりよいものにすることで、社内はもちろん、多くのお客さまに価値をもたらしていきたい。DPPの実現は、私自身にとっても、思い入れの強いプロジェクトになっています」

「予兆管理サービス」という最先端のソリューションは、JERAに所属する発電・ITそれぞれのプロフェッショナルが協働することで開発されたものだ。開発・運用のほとんどすべてを内製で成し遂げたことは、JERAの「技術力の高さ」を証明する事実だと言えよう。島添自身、業務を通じて、海外の顧客と向き合い続けているが、サポートに対する感謝の言葉や称賛の言葉が、何よりのやりがいにつながっていると話す。

「『ありがとう』という感謝の言葉をいただけることは、私たちのソリューションの価値を実感していただけたということです。その瞬間こそが、今の仕事の醍醐味だと思っています。また、私たちのサービスを利用する海外のお客さまの中には、こうした運用ソリューションを内製で構築したいと考えているお客さまも多いのですが、なかなか実現まではこぎ着けられないようです。『このソリューションを内製した、JERAはすごいね!』という言葉をいただいた時には、自分たちの仕事や技術を誇りに思うことができました」

Project 03

目的は、価値を提供すること。

「予兆管理サービス」を通じた価値提供と、さらなる高度化に寄与したのが、ITのプロフェッショナルである安田和樹だ。発電所のデータ分析・対策立案というデータサイエンティスト的な役割から、新たなアプリケーションの要件定義・開発に至るまで、幅広い活躍を見せている。プロジェクトの参画にあたって、彼は、とある強い想いを抱いていたのだという。

「最先端技術の数々に触れられる機会を得られた。そのことはもちろん大きな喜びでしたが、それ以上に、その先にいる『お客さまの存在』が私にとって大きなモチベーションであり、プレッシャーでもありました。JERAのナレッジと最先端技術を駆使してシナジーを生み、よりよい価値をお客さまに提供したい。そんな想いを抱いて、このプロジェクトに臨みました」

アプリケーションの開発ひとつ取っても、このプロジェクトは新たなチャレンジの連続だった。「計画→設計→実装→テスト」という開発工程を機能単位の小さいサイクルで回していくアジャイル開発手法を取ることで、よりスピーディーで柔軟なアウトプットを目指していった。

「今回のプロジェクトでは、さまざまな経験と発見がありました。アプリケーション開発においては、海外の開発パートナーに対し私たちの意図や業務を理解してもらうためにさまざまな工夫が必要で、異なる文化や背景の違いを感じながら開発に取組むこととなりました。

しかし、その違いから私たち自身が思いつかなかったような素晴らしいアイディアを得ることもできました。アプリケーション開発者とJERAの技術者がそれぞれ異なる視点を持ち寄り掛け合わせることで機能の高度化を行うことができました。ただ、データの思いがけない関連性や、データに表れない動きに対する推察といった設備の知見を踏まえた、ベテラン技術者の暗黙知をいかに形式知化してアプリケーションに反映させるかに苦労しましたね」

Project 04

テクノロジーだけで、変革は成し得ない。

DPPプロジェクトには、AIやIoT、デジタルツイン、メタバースなど、最先端のテクノロジーが活用されている。それらの技術は、かつてない変化をもたらすものだが、いくら素晴らしいソリューションを導入したとしても、プロジェクトの目的が達成されることはない。大切なのは、それを扱い、発電所を支えていく人が変わることにある。JERA内部におけるチェンジマネジメント活動をリーダーとして牽引したのが、足立貞雅だ。

「これまで火力発電の技術者として、キャリアを歩んできた私にとって、その『変革』を担えることは、これ以上ない喜びでした。ただし、人はそう簡単には変われないもの。今までの仕事のスタイルを一新させることは、本当に難しいことです。何のために、この取組みが必要なのか。この取組みが、発電所にどのようなメリットをもたらすのか。変革の対象となる人に寄り添い続け、『腹落ち』と『自分事化』を促すことを心がけていました」

働き方を変えることは、人の意識を変えることでもある。そして、それは一朝一夕に成せるものではない。だからこそ、変革を担うメンバーたちは、泥臭く、誠実な活動を貫いていく。およそ1年の間、リーダーである足立をはじめ、多くのメンバーが現場へ常駐し、フェイストゥフェイスで、DPPの目的や意義を語っていったのだという。そして、そこから生まれた変化は、より大きな革新の波を生み出していくことになった。

「対話を通して、変革を遂げていった人が、今度は変革の伝道師として、周囲を巻き込んでいく。人の変化を目の当たりにできたことに、大きな喜びを感じています。そして、このプロジェクトは、私にも意識変革の機会を与えてくれるものでした。アドバイザーを務めてもらった外部の有識者から『JERAは失敗しない文化が根づいている印象がある。

成功体験も大事だが、DXではFail Firstを浸透すべきだ』というコメントをいただいた時には、思わずハッとしてしまいました。長年にわたって醸成された電力業界の企業文化から、いまだ脱却できていないのが、私たちの現状。私たちは、これからも変わり続けていかなければならないのです」

Project 05

その挑戦は、人々の幸せにつながる。

彼らが生み出した価値は、発電所の常識を大きく変えるインパクトをもたらした。そして、2023年1月に誕生した、最新鋭の発電所、新姉崎火力発電所には、そのソリューションのすべてが盛り込まれている。ここで実現した高度なオペレーションは、やがて世界のスタンダードとなっていくことだろう。

ただし、プロジェクトはここで終わったわけではない。メンバーたちは、今もソリューションにさらなる磨きをかけ、メタバースや生成AIなどを駆使した新たなソリューション・サービスの開発も進んでいる。「ありたい姿」に向かって、挑戦を続けるメンバーたちに、ここまでの振り返りと今後の展望を聞いた。

「このプロジェクトは、JERAの新たな文化を築き上げていくものです。発電所と共に歩みながら、かつてない価値を創出できたことを誇りに思っています。ここまでの成果を出せたことは、メンバー一人ひとりの情熱と仕事があったからこそ。そんなメンバーたちを心から誇りに思っています。とはいえ、まだまだ変革は道半ばです。新しい働き方を実現し、さらなる価値創造につなげていく。そのためのチャレンジを続けていきたいものですね」(手川)

「現在の『予兆管理サービス』は、稼働状況を監視し、予兆を察知し、推奨事項を提案することまでしかできません。実際に遠隔で操作・対応できるようになれば、このサービスはさらに価値あるものになっていきます。セキュリティをはじめ、課題は山積していますが、そうした価値に挑むからこそ、私たちが存在する意味があるし、その仕事も面白いものになるのだと思っています」(島添)

「DPPプロジェクトは、JERAにおける革新の象徴であり、ここで築かれたナレッジは他の分野に活かせる貴重な財産になると思っています。O&M・エンジニアリングだけでなく、事業開発や最適化といった他の事業分野でも『変革』を起こすことができるはず。『変革』を目指すなら、DPP推進部に聞け、と言われるような存在になっていきたいですね」(安田)

「発電所では、運転を支える技術者をはじめ、メーカーや清掃会社など、さまざまなパートナーが働いていて、人生の大半の時間を過ごしています。その人たちすべてが、発電所で仕事をすることに幸せを感じている。仕事を通じて、人生を豊かにしている。私が実現したいのは、そんな発電所です。そのためにも、私たちが現状に満足していてはいけません。よりよい価値を生み出すために、さらなる困難に挑み続けていくつもりです」(足立)

To The Borderless World

今こそ、やらなきゃダメなんだ。

技術と人とデータを
掛け合わせて
発電所の常識を変える。
その変革は
JERAに新たな文化を
人々に幸せをもたらすものだ。
彼らが生み出したソリューションは
やがて世界の常識を
変えていくことになるだろう。

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