CO₂が出ない火をつくる。
碧南火力発電所
ゼロエミッション火力プロジェクト

Project

Introduction

燃焼してもCO₂を排出しないアンモニアを発電燃料に。「ゼロエミッション火力」は2050年の脱炭素化に向けて、JERAの核となるプロジェクトだ。現在、碧南火力発電所ではアンモニア燃焼の大規模実証試験を行うべく、新たな設備の建設がピークを迎えている。現場の責任者や技術者たちは、このかつてない難題にいかにして立ち向かっているのか。メンバーたちのチャレンジに迫る。

※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、2021年度からアンモニア燃焼技術の確立に向けた実証事業に取組んでいます。

  • O&M・エンジニアリング運営統括部
    脱炭素技術 部長

    機械工学専攻

    一柳 真規

  • O&M・エンジニアリング運営統括部
    碧南火力発電 所長
    兼 碧南火力燃料アンモニア設備建設 所長

    工学部

    谷川 勝哉

  • O&M・エンジニアリング運営統括部
    脱炭素技術部 脱炭素エンジニアリングユニット

    機械工学科

    水谷 亮介

※情報は取材当時のものになります。

Project 01

今、世の中にないものを。

CO₂を出さない火をつくる。それは、まさに人類の夢を実現するプロジェクトだと言える。JERAは5年以上前から、燃焼してもCO₂を排出しないアンモニアに着目し、基礎研究を重ねてきた。そして今、その革新の種は、ゼロエミッション火力の実現に向けて大きく動き始めている。同プロジェクトの実施責任者である一柳真規は、その概要を次のように話す。

「本プロジェクトは、出力100万kWを誇る碧南火力発電所4号機にて、燃料である石炭の20%をアンモニア燃料に置き換えて発電する実証試験です。大型の商用石炭火力発電設備で20%のアンモニアを燃焼する実証事業は世界初の試みになります。約2カ月間の試験運転によって、2027年の商用化実現に向けたデータ採取や評価を行っていく予定です」

液化したアンモニアを船舶から発電所構内のタンクに受入・貯蔵し、海水を熱源とした熱交換器にて気化させ、ガス化したアンモニアをボイラに送り石炭と同時燃焼させる。それが、アンモニア燃焼の概要だ。炭素が含まれないアンモニアの割合が増えるほど、CO₂排出量は減少することになる。

ただし、アンモニアを燃料にすることも、それによって大規模な発電を行っていくことも、すべてに前例は存在しない。技術者として確かな実績を残してきたからこそ、彼はこのチャレンジがいかに困難であるかを知っていた。

「今、世の中にないことを実現するわけですからね。『これは大変なことになったぞ』というのが率直な心境でした。ただし、この試みが実現すれば、再生可能エネルギーのように天候に左右されることなく、マルチに活躍できる電源が生まれることになるわけです。そこにチャレンジする機会を与えられたことは、私にとってこの上ない喜びでした」

Project 02

やがて、不安は期待へと変わる。

「世界初」を実現するフィールドに選ばれたのは、碧南火力発電所。日本最大にして、世界最大級の石炭火力発電所だ。同発電所の所長であり、碧南火力燃料アンモニア設備の建設所長を務める谷川勝哉は、プロジェクト発足時の心境をこう振り返る。

「碧南が世界初となる実証試験のフィールドになる。それが決まった瞬間は無意識に『よし!』と叫んでいました。世界的に脱炭素化が叫ばれる中で、地域の皆さんや、産業界の皆さんから『碧南は大丈夫なのか』という不安の声をいただくことも少なくなかった。だからこそ、ゼロエミッション火力推進の『ファーストペンギン』となれることには、大きな喜びがあったんです。

ただ、同時に少しの不安があったことも否めません。かつてない取組みを成功させなければいけない。かつ、地域にとって安心・安全なものにしなければならない。私たちの仕事が持つ責任と誇りを再認識させられる契機でもあったと思います。退路はない、不退転の覚悟で臨むしかないと意気込んでいましたね」

発電所は地域の理解があってはじめて成り立つもの。谷川がとりわけ注力したのが、地域住民や産業界にプロジェクトやアンモニア利用の安全性などについての理解を促すPA活動※だ。説明会や視察会などの機会を積極的に設けることで、プロジェクトにさらなる推進力をもたらした。

「アンモニア燃焼のメリットは何か。なぜアンモニアなのか。危険はないのか。電気料金はどうなるのか。本当に成功するのか……。対話の機会を設けたばかりのころは、住民の皆さまや産業界から、さまざまな不安の声をいただきました。しかし、さまざまな懸念点を真摯に、誠実に説明させていただくことで、それが『大きな応援と期待』に変わっていったんです。

そうした温かい声や期待の視線が、私たちにさらなる勇気を与えてくれたことは言うまでもありません」

※パブリック・アクセプタンス=企業活動の理解促進を図る活動のこと。

Project 03

どこまでも、「未曾有」を突き詰める。

本プロジェクトでは、アンモニア燃焼時に発生する窒素酸化物(NOx)を従来レベルに抑える混焼バーナーの開発を重工メーカーが担当し、アンモニア燃料の貯蔵設備や気化器などの開発をJERAが担当している。エンジニアとして、その設計や調査・検討を任された水谷亮介は、並々ならぬ想いを抱いて、このプロジェクトに参画した。

「私は碧南火力発電所でキャリアをスタートし、武豊火力発電所の建設に携わるなど一貫して石炭火力に関わってきました。石炭火力なくして安定供給は成り立たない。けれど、脱炭素が世界的にクローズアップされる中で、石炭火力が逆風を受けていることに悔しい想いを抱いていたんです。

ゆかりの深いこの場所で、ゼロエミッション火力の実現に携われることは、私にとって何よりの喜び。『新たな技術のリードオフマン』になれることに、心からワクワクしています」

将来の商用化を見据えた設備を設計する。そのプロセスにおいて、もっとも彼の頭を悩ませたのは、地震発生時の安全性をいかに担保するかだった。水谷が手がける設備は、ただの設備ではない。人々の生活に欠かせない電力供給に関わっていくものであり、アンモニアという毒性を持つ化学物質を扱うものだ。設備が原因で、発電を止めることは、絶対にあってはならない。

「自然災害対策は、どこまでやっても正解がないもの。実際に東日本大震災は未曾有の大災害だと言われましたが、今回の設計においてはその『未曾有』をどこまで想定し、どこまで突き詰められるかが大きな勝負でした。私が検討した内容をベースに、チームでディスカッションを重ね、あらゆるリスクに対して対策を講じました。

設計方針の決定にあたっては、言葉では表現できないほどの苦労があり、あらゆるリスクを想定し続けたせいで、休日も『こんな危険性があるかもしれない』と心配し続けたこともあったほど(笑)。正解がないことの難しさを痛感させられました」

Project 04

歯車は回り出した。成し遂げるのは、これからだ。

ゼロエミッション火力をこの手で実現する。地域にクリーンなエネルギーを届ける。プロジェクトに関わる者すべての想いと力を結集して、同プロジェクトは着実に前進を続けている。アンモニア燃焼の大規模実証試験は、当初の予定を約1年前倒しして、2023年度中に開始されることとなった。さらには、50%以上の利用に向けた計画も並行して進められているのだという。ここまでのプロジェクトを牽引してきた3名に、現時点での総括と今後の展望を聞いた。

「プロジェクトは着実に進行していますが、実証試験の開始はこれからです。私たちはまだ何かを成し遂げたわけではありません。本当の意味での達成感や喜びはこのプロジェクトが成功してはじめて得られるものだと思っています。もしかしたら、これまでに感じた苦労なんて、苦労のうちにも入らないかもしれない。本当の課題にぶつかるのはこれからだと思っています。

正解や実績がないものをつくろうとしているのですから、そんなことは当たり前です。このプロジェクトは脱炭素に向けた第一歩となるもの。困難を乗り越えていくために、私たちエンジニアがいるのですから」(水谷)

「まだプロジェクトは道半ばですが、周囲の理解を得て『歯車が回り出した』という実感を得た瞬間があり、その時にはかつてない高揚感がありました。ゼロエミッション実現に向けて、解決しなければならない課題は、まだまだ出てくるでしょう。

しかし、私はJERAのエンジニアが持つ、技術と意志を信じています。どんな高い壁であっても、この素晴らしいメンバーたちのアイディアと力を結集すれば、絶対に乗り越えていけるはず。必ずや、このプロジェクトを成功させ、世界のエネルギー課題を解決する新たな常識をつくり出してみせます」(一柳)

「私たちに対する期待の声に応えるためにも、何としてでもプロジェクトを成功させる。誰もが強い想いを抱いて、日々の仕事に向き合っています。このプロジェクトはエネルギーの未来を左右する試金石となるものですが、その影響は発電のみならず、さまざまな業界へと波及していくことになるでしょう。

世界を変えるひとコマに携わっている責任と誇りを胸に、設備・技術を担う一柳さん、水谷さんたちと連携しながら、このチャレンジを結実させたいと思っています」(谷川)

To The Borderless World

今こそ、やらなきゃダメなんだ。

CO₂を出さない火をつくる。
その取組みは
もはや、夢ではない。
人々の期待を力に変えて。
技術と意志。
そのすべてを懸ける。
JERAが踏み出す、偉大なる一歩は
やがて、世界に答えを示す。

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