人に問う。

その人らしさが、強みになる。
だから、「あなたの想い」を
大切にしたい。

arca & JERA

  • 辻 愛沙子

    株式会社arca CEO
    クリエイティブディレクター

    社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の二つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。2019年秋より報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演し、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

  • 藤家 美奈子

    JERA執行役員
    ダイバーシティ&インクルージョン担当

    1988年東京電力入社。横浜支社総務グループマネージャー、株式会社キャリアライズ経営戦略室長、福島本部福島原子力補償相談室東京補償相談センター所長を歴任し、2016年に鶴見支社長、2019年にJERA監査役に。2022年から現職。ダイバーシティ&インクルージョンをJERAに根づかせるチャレンジを通じて、社員のモチベーション・エンゲージメントを向上させる新たな企業文化の醸成を目指している。

    ※情報は取材当時のものになります。

01Agenda 「多様性の本質」って何だろう?

多様性という言葉が当たり前に
飛び交って久しいですが
各企業によってその受け止め方は
さまざまであると感じます。
お二人は多様性の本質を
どのように捉えられていますか。

多様性について話をする時に、よく「みんなちがって、みんないい」というフレーズを耳にします。でも、私はその言葉に少し違和感を抱いていて。なぜなら、多様性は「いい、悪い」で評価されるべきものではないからです。その人が女性だからいい、その人が外国籍だからいいなんてことはないですよね。

「みんなちがうよね」というのが実際のところ。ダイバーシティの取組みでは、女性やシニアといった属性にスポットを当てることが多いですが、すべての人が、それぞれに違う「その人らしさ」を発揮し、それぞれの働き方をして活躍できる。そこがゴールになるべきなのだと思っています。

藤家

そうですね。JERAでも、ダイバーシティ&インクルージョン推進のビジョンに「社員やその家族が幸せになること」と、全社員の活躍の場を拡大することで「企業価値を高める成長を促すこと」を掲げています。ただ、本質はそうであっても、「あなたと家族が幸せになるための取組みですよ」「活躍の場を広げる取組みですよ」といった抽象的なフレーズでは、なかなか社員の皆さんに刺さらないという課題もあるんです。

そこで私たちはまずマイノリティ、特に女性活躍推進に注目し、支援策を充実させることに注力してきました。電力会社はもともと女性社員が少なく、リーダーになる女性も少なかったですから。今は新しいカルチャーをつくっていくために、土を耕しているところ。手応えは感じているものの、まだまだ道半ばですね。

私自身、さまざまな企業のインナーコミュニケーションなども手がけているのですが、海外の企業に比べて、日本の企業はまだ過渡期にある状況だと思っています。現状を劇的に変えていくことはやはり難しい。現状を可視化して、一つひとつ課題を解決していくことは、とても大切だと思います。そうした取組みが実を結び、多様な人財が活躍できるようになれば、企業が生み出す価値はより深みを増し、多くの人に届くものになっていくことは間違いありませんよね。

先ほどお話しした「その人らしさ」とはスキルに限定した話ではなく、「視点」が大きな意味を持ってくると私は考えているんです。例えば、任天堂の「Splatoon」というゲームには、色覚サポートという機能を持たせることで、よりたくさんの人に楽しんでもらえる工夫がしてあります。こうした取組みが実現したのは、あらゆるユーザーに心配りができる「視点」が活かされているからこそだと思うんです。

藤家

JERAはこれまでの方法に囚われず、クリーンなエネルギーを世界に届けていく会社です。辻さんの話す「視点」やアイディアはこれからのビジネスに大きな価値をもたらす、必要不可欠なものになります。これから入社してくる人財のためにも、今いる私たちが頑張らなければいけませんね。

02Agenda 「女性のため」から「みんなのため」に。

藤家

属性ごとにスポットを当てること、特に女性活躍推進に注力するのには、もうひとつ大きな理由があります。それは、組織がマジョリティ中心の視点のままでは、マイノリティをそれぞれの属性で一括りにしがちで、個を活かせないということです。昔の話にはなりますが、私自身、会議に参加した時に「女性としてどう思いますか?」と意見を求められたことがありました。

でも、それってすごく不健全ですよね。本当に大切な「私としての意見」よりも「女性として」が勝ってしまうわけですから。内心、「そもそも人それぞれだしなぁ……」なんて思いながら発言した思い出があります(笑)。

わかります(笑)。広告のカンファレンスなどで登壇する機会をいただくことも多いのですが、女性が私ひとりだと、どうしても「女性枠」としての役割を期待されてしまう。女性がバリバリ仕事をするのが当たり前ではなかったころに比べると大きな進歩だと言えますが、まだまだ不十分ですよね。

すべての人が「その人らしさ」を
発揮するために
よりフラットな環境をつくっていく。
そのためには
男性も当事者意識を
持たなければいけませんね。

藤家

ここ20年近く、一般的な企業が取組む女性活躍推進は「女性のため」に行われていたものでした。でも、そんな状況はだいぶ変わってきたと思います。意思決定層に女性が入り、多様な価値観で会社経営が行われるようになることは、「女性のため」ではなく、まさに「企業の成長のため」です。それに、すべての社員のウェルビーイングを実現するという意識も強くなってきたんです。もはや、「子育ては女性がするもの」というのは、古い常識になりつつあります。

子育てに積極的な男性社員の存在が当たり前になりましたよね。arcaのメンバーにもそんな方がいるんです。お子さんが生まれる前は、「今までと変わらず、バリバリ仕事したいです!」と言っていたのに、「新しい喜びを見出しました!」と働き方が大きく変わって。周囲のメンバーもミーティングの時間を配慮したり、積極的にサポートしたり、彼のやりたいことを応援してくれています。

藤家

これは自慢なのですが、JERAでは男性社員の育休取得率が40%を超えているんです。これまでの常識を変えていこうとしている私たちからすると、「よく取ってくれました!」なんて喜んでいるのですが、当の本人たちに話を聞いてみると「子どもが生まれたから取得しただけですよ」と自然体なんです(笑)。本当に頼もしいですよ。彼らがリーダー層になっていけば、私たちのカルチャーも大きく変わっていくことになるでしょうから。

40%はすごいですね! みんなが活躍できる時代においては、男性も「一家を支える大黒柱に」「24時間、戦えます」なんて、マッチョな生き方をする必要がなくなりますよね。

藤家

そうですね。もうひとつ期待しているのは、性別に拠らないロールモデルの選択肢が増えていくことなんです。仕事もバリバリこなして、家庭も大事にしている。そんな男性社員を女性がロールモデルにすることもあれば、男性社員が女性社員をロールモデルにするケースも増えていくでしょうね。

とても素敵なことだと思います。ロールモデルの選択肢が増えるということは、働き方の選択肢が増えていくことでもあります。「こんな働き方もあるんだ」と気づくことができれば、その人の可能性はさらに広がっていきますよね。

03Agenda 「よかれと思って」は通用しない?

女性が「私らしさ」を発揮できる環境を整える。子育てや介護の必要がある人を支えていく。それと同時に忘れてはいけないのが、「その人の想いを聞く」ことだと思うんです。

藤家

私も、まったく同じ意見です。かつては「子育てをしている人だから」と周囲が一括りにしがちでした。でも、どう働いていきたいかは人によって違うはずですよね。「サポート体制は整っているから、大きなプロジェクトにも、海外出張にもチャレンジしたい」という人もいれば、「今は子育てに注力して、ペースを落としたい」という人もいます。

「○○さんは子育てで大変だから、配慮しよう」などと気を利かせたつもりが、その人の意志とは真逆になってしまうことになりかねない。大切なのは「あなたはどうしたいのか」を聞き、その想いを尊重すること。その点は今後もしっかりとマネジメント層に浸透させていきます。

属性で一括りにして、その人を見ず、思いやった気になる。現代において、それはマネージャーの甘えですよね。厳しい言い方になってしまいましたが、しっかりと対話をしなくてはメンバーの機会が失われてしまいます。ただ、かつてそうしていた人たちに悪気がないことはわかっているんです。優しさからの配慮であることには間違いありませんから。

藤家

そうなんです。「よかれと思って」そう接してきたんですから。

多様な人財を受け入れる「器」を整えながら
一人ひとりの想いに向き合っていく。
ダイバーシティ&インクルージョンの取組みは
すべての人に幸福なチャレンジをもたらし
ビジネスの成長、ひいては社会の発展に
つながるものだと感じさせます。
最後に、これから社会で活躍していく
若者たちにメッセージをいただけますか。

自分が「やりたいこと」や「なりたい姿」を大切にしてあげてほしいですね。自分だけの夢や個性は、自分を幸せにしてくれる原動力になります。そして、その一方で長い社会人生活は、さまざまな出会いと困難にあふれています。理想の生き方や働き方も変化して然るべきです。しなやかに、そして力強く、あなただけの人生を歩んでいってください。

藤家

もし、皆さんが「こうしたい」「ああなりたい」という想いを抱いているのなら、それをしっかりと口に出して、発信していただきたいと思います。一人ひとりの想いを尊重し、企業としてそれを支えていく。人財がいきいきと活躍し、成長できなければ、企業の成長もあり得ません。

そのための環境をしっかりと守っていくことは、私たち少し前を歩いている者の責務だと思っています。若い世代の可能性をさらに伸ばしていけるよう、全力を尽くしていきたいですね。

To The Borderless World

今こそ、やらなきゃダメなんだ。

「あなたらしさ」は
あなただけの強み。
自らの想いを大切にしてほしい。

辻 愛沙子

一人ひとりが抱く
想いに寄り添い
その成長を支えたい。

藤家 美奈子

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