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巨人は桑田コーチの“第7世代”意識改革で3連覇へ。阪神も藤浪復活で黄金期到来の予感。

アピールを続ける中日の3年目・根尾(左)。DeNA・三浦監督は移籍した梶谷の穴をどう埋めるか。©KYODO
桑田コーチは2006年に退団して以来、15年ぶりに巨人のユニフォームを着る(左)。藤浪は昨季、リリーフ登板も経験して復調の兆しを見せた。 ©KYODO

3月26日のJERAセントラル・リーグ開幕に向けてNumber Webでは、2021年シーズンの戦いを展望する連載をスタート。第4回は、昨季優勝の読売ジャイアンツ、2位の阪神タイガースのライバル球団が繰り広げる、熾烈な覇権争いを占う。

読売ジャイアンツJERAセ・リーグ2020:優勝

文=鷲田康

 今年の巨人の野球は大きく変化するかもしれない。

 「去年まではベンチ入り26人で24人か25人を使う野球をしてきた。しかし今年は10人か11人、多い時でも13人で勝負する。そういうチーム作りをしていこうと、キャンプからその目標に向かってやっている」

  巨人・原辰徳監督は過去2年から今年のチーム作りの転換をこう説明する。

 「確かにセ・リーグを連覇はしました。しかし日本シリーズでは同じ結果しか残せていない。そこは今年のチームにとっての大きな課題なのは言うまでもありません。今まではみんなの力を私が合わせて総合力という形で戦ってきた。しかし短期決戦ではそういうチームは脆さが出る。だから今年は強い選手集団を目標にする」

 全ては2年連続日本シリーズで惨敗したソフトバンクに、力で戦いを挑めるチームを作るためであり、そのために昨オフからチーム編成でも積極果敢に動き続けている。

 オフにはフリーエージェントの梶谷隆幸外野手と井納翔一投手をDeNAからダブル獲得。年明け早々には桑田真澄投手チーフコーチ補佐の就任が発表され、キャンプ終了直後には田口麗斗投手を交換要員にヤクルトから廣岡大志内野手を獲得する緊急トレードを成立させた。

投手陣の意識改革に着手

 中でも桑田コーチの就任は、これまでの巨人の野球に大きな化学変化を起こさせる触媒となるものだった。

 就任直後から桑田コーチは「先発投手は1回15球、9回135球の完投を目指して欲しい」と目標を掲げ投手陣の意識改革に着手。もちろん現状でこの目標を達成できる力のある投手は、エースの菅野智之投手くらいしかいないことは十分、承知のはずだ。そもそも1イニングを15球で投げきり、9回を135球で完投するなど、そう簡単に達成できるものではない。

 ただ、目標を高く掲げることで、これまでは100球を投げ切ることを目指してきた先発陣が、全く違うアプローチで練習にも試合にも臨むことになる。そこからしか全体のレベルアップは生まれないという考えだった。

 もちろんそのレベルアップの対象となるのが畠世周、桜井俊貴に左腕の高橋優貴ら昨年まで先発を担ってきた若手投手陣ということになる。ただ、原監督の本当のターゲットはさらに若い巨人軍“第7世代”とでも呼ぶべき3人の投手たちである。昨年からローテーションの一角を担っている戸郷翔征に、同じく高卒3年目を迎える直江大輔、左腕の横川凱の3投手。技術的にも考え方においても、今がまさに「鉄は熱いうちに打つ」べき投手たちであり、桑田コーチ就任の最大の狙いもそこにある。

左腕・横川の成長がトレードに繋がった!?

 昨年は期待されながら終盤に息切れした形で9勝止まりの戸郷は、菅野に次ぐ2番目の投手という立ち位置で今年は2桁勝利、150イニングの投球回数が最低ノルマとなる。一方、原監督が「新人王を獲らせる」と宣言した直江は、昨年の腰のヘルニア手術後の回復も順調に進み、開幕早々には戦列復帰の目処も立ってきている。

 キャンプから練習試合と着実に足跡を残している横川も、ローテーションの一角を狙えるところまできている。そしてこの左腕の成長が、あの思い切ったトレードの伏線となったことも間違いないところだろう。

 昨年まで先発に中継にとユーティリティー投手として貴重な役割を担ってきた田口を同一リーグのヤクルトへと放出することは、巨人にとっても重い決断だったはずである。

 だが、コロナ禍の影響で今年の打線の目玉だったジャスティン・スモーク内野手とエリック・テームズ外野手の来日のメドがいまだに立っていない。刻一刻と変わる状況にすぐさま反応し、2人の穴埋めとなる存在として狙いを定めたのが未完の大器・廣岡だった。

廣岡の加入で重量打線が完成へ

 内野なら全ポジションをこなせる廣岡の加入は、開幕に間に合わない新外国人選手の穴埋めばかりではなく、吉川尚輝、北村拓己両内野手を軸に展開されている二塁のポジション争いでも大きなインパクトを与えるはずだ。

 吉川がポジションを奪えば1番に入り、梶谷を2番、坂本勇人内野手を3番に起用するオーダーも可能になる。一方、北村か廣岡が二塁で起用されて新外国人2人が加われば、1番の梶谷から坂本、丸佳浩外野手、岡本和真内野手に5番のスモーク、6番のテームズと続いて7番に北村か廣岡という重量打線が完成する。

 「デンとした野球をするなら北村や廣岡が打線に入ってくれることも魅力になる」

 原監督のこの言葉が、巨人が今年目指している野球を如実に表すものでもあった。

 自立した選手集団という高い理想を掲げる今年の巨人。もちろんそう簡単に理想通りにチームが動くなどとは原監督も思っていない。だからこそ中川皓太投手をクローザーに転向させてルビー・デラロサ、高梨雄平、鍵谷陽平らの中継投手陣の充実を図り、総合力で他を圧するこれまでの戦いの準備も忘れてはいない。

  変幻自在。リーグ3連覇と悲願の日本一奪回のために、今年も原野球は何でもありだ。

阪神タイガースJERAセ・リーグ2020:2位

文=佐井陽介(日刊スポーツ)

 他ならぬ選手たちが明るい未来を確信している。

 一軍・沖縄宜野座キャンプ最終日となった3月1日。阪神の新選手会長、近本光司は手締めのあいさつで誓いを立てた。

 「ここ数年チームの年齢層も若くなり過渡期になっていましたが、今年からは黄金期に入ります!」

 首脳陣、ナインらが作った大きな輪の中心で、2018年ドラフト1位の26歳が青空に叫んだ。若き虎軍団は2021年、本気でセ界の勢力図を塗り替えにかかっている。

2月、在阪メディアの話題をかっさらったのは2020年ドラフト1位・佐藤輝明のフルスイングだった。憧れは大リーグ屈指のスラッガー、フィリーズのブライス・ハーパー。22歳の規格外ルーキーは南国の地で、周囲の予想をはるかに上回る成長曲線を描いた。

2月9日……対外試合デビューとなった日本ハムとの練習試合でプロ初アーチ。

2月16日……楽天との練習試合では、バットを折られながらも右翼ポール際の大ファウルでオーバーフェンス。

2月18日……DeNAとの練習試合で宜野湾市立野球場の電光掲示板を越える推定飛距離140m弾。

キャンプ中の対外試合8戦で打率3割9分4厘、2本塁打、9打点。3月5日のソフトバンク戦では1987年の八木裕以来、球団史上34年ぶりの新人によるオープン戦初打席初アーチまで決めた。日本一軍団の今季開幕投手を任される石川柊太から、しかも逆方向に運んで驚かせた。

「長打力、振る力では負けていない部分があるかな、と。プロでもしっかりとらえれば本塁打にできるというのは、もう分かった」

キャンプ打ち上げ直後に発した堂々たるコメントにも違和感はない。ソフトバンク柳田悠岐を彷彿させるスイングスピードは誰の目にも魅力的。左翼にしろ三塁にしろ、開幕スタメンに名を連ねる可能性は極めて高くなっている。

「ピッチングが楽しい」藤浪に再覚醒の気配

 「打」が佐藤輝ならば、「投」の最注目株は2012年ドラフト1位の26歳・藤浪晋太郎で異論はないだろう。沖縄では2015年ドラフト1位の27歳・高山俊と2人、矢野燿大監督から「キャンプMVP」に選ばれている。

 近年は制球難に端を発した不振に苦しんだ藤浪だが、中継ぎも経験した昨季は球団史上最速の162kmをたたき出すなど復調を印象づけた。今春は明らかに制球力、安定感が増しており、再覚醒の気配がプンプン漂う。

 オフのうちに一流投手たちの投球を研究。最後まで右半身に体重を残して加速距離を取るスタイルを模索した結果、ワインドアップ投法に再挑戦している。2月末の時点で直球は158km、スプリットは140km台後半を計測。本人も「ピッチングしていて楽しい」と充実感を隠さない。

 3月5日ソフトバンク戦を終えた時点で実戦4試合計12イニングを1失点。3年ぶりの開幕ローテ入りどころか、入団9年目で初めて開幕投手を任されることが決まった。

 「藤浪が投げる日だから見に行きたい、と言ってもらえるようになりたい」

 背番号19にとって、2021年は完全復活を成し遂げる1年になりそうだ。

世代交代の中心、大山悠輔の変貌ぶり

 佐藤輝と藤浪にスポットライトが当たり続けた今春。若きリーダーたちが水面下で「ポストレジェンド問題」の解決に動き始めていた事実も見逃せない。中でも2016年ドラフト1位・大山悠輔の変貌ぶりはキャンプを通して際立っていた。

 チームはここ2年で世代交代を一気に進めている。2019年オフに鳥谷敬が退団。2020年シーズン限りで藤川球児、上本博紀が現役引退し、福留孝介、能見篤史は退団の道を選んだ。精神的支柱が軒並み抜けた事実を人一倍重く受け止めていたのが、新主将に就任したばかりの26歳・大山だ。

「福留さんがやってくれていた役割をどうするか。チーム全体を締めないといけない時にどうするか」「去年までは先輩に遠慮していた部分もあった。今年は相手が先輩であっても、話すところはしっかり話そうと思っています」

 昨季28本塁打の4番打者は控えめなイメージを打ち破り、ナインをまとめにかかる覚悟。投手主将でもある2013年ドラフト1位の29歳・岩貞祐太と共に、みずみずしいリーダーシップにも期待がかかる。

矢野監督の契約最終年、目標はただ一つ

 チームは昨季リーグ2位。今季は矢野監督の3年契約最終年になる。2021年スローガンは「挑・超・頂―挑む 超える 頂へ―」。16年ぶりのV奪回に勝る目標など何もない。

 大黒柱の西勇輝、3年連続ゴールデングラブ賞の梅野隆太郎を中心にバッテリーの陣容はセ界屈指。3年連続で12球団ワースト失策数の守備力も、2月に臨時コーチを務めた川相昌弘氏の助けも借りて地道に改善中だ。今春一軍キャンプに参加した43人の平均年齢は26.7歳。新旧のドラフト1位メンバーが投打の柱に成長を遂げ、いよいよ機は熟しつつある。

 新助っ人の韓国リーグ昨季2冠王メル・ロハス・ジュニア、同最多勝右腕ラウル・アルカンタラはいまだ来日のメドが立たない。ただ、2人の不在を嘆く声が今どれだけ聞こえるだろうか。主役はあくまで生え抜きのスター候補生たち。各選手の伸びしろを踏まえれば、近い将来の黄金期到来は決して夢物語ではない。