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中日は「スピード」改革で1点にこだわる。DeNAは新監督が促す「競走」で下馬評を覆したい。

アピールを続ける中日の3年目・根尾(左)。DeNA・三浦監督は移籍した梶谷の穴をどう埋めるか。©KYODO
アピールを続ける中日の3年目・根尾(左)。DeNA・三浦監督は移籍した梶谷の穴をどう埋めるか ©KYODO

3月26日のJERAセントラル・リーグ開幕に向けてNumber Webでは、2021年シーズンの戦いを展望する連載をスタート。第3回は、昨季3位の中日ドラゴンズ、4位の横浜DeNAベイスターズの指揮官の言葉から、長らく遠ざかる優勝への道を見通す。

中日ドラゴンズJERAセ・リーグ2020:3位

文=小西斗真

 中日が最後に優勝してから10年が経つ。

 10年前は東日本大震災があり、開幕は遅れ、さまざまな特別ルールが採用されたシーズンだった。投高打低。極貧打線を鉄壁の守りと盤石の投手陣が引っ張った。プロ野球界の選手の入れ替わりは早い。当時在籍していた選手は8人しか残っておらず、戦力だったといえるのは平田良介、大島洋平ら数名だ。

 与田剛監督の就任1年目、2019年の5位がホップとすれば、長い低迷期に終止符を打ち、8年ぶりのAクラス(3位)となった昨シーズンはステップ。契約最終年の今シーズンは、もちろん特大のジャンプしか目標はない。

 「選手には1月31日の全体ミーティングでこう伝えました。『コロナという大きな敵に立ち向かう中で、目標を持ってやっていこう』と。つまりは優勝です」

 続いて口にしたのが「スピード」という言葉だった。

 「決断にしても伝達にしても、もちろん野球においてもスピードを重視します。監督である自分の一存で決定することも増えてくる。今年はもうちょっと様子を見てみようとか、あと1回はチャンスを与えようとかがなくなってきます。勝負のシーズンです」

 情をはさむ余地はない。非情に徹し、勝負に挑む。つまり「今シーズンのドラゴンズの見どころは?」と問われれば「優勝できるかどうか」の1点しかない。

沢村賞・大野の“エースの責任”

 「大きな見どころ」に達するための「小さな見どころ」は3つある。

 まずは何といっても大野雄大がエースの働きをすることである。昨シーズンは10完投、6完封という超人的な活躍で沢村賞に輝いた。例年、春先は状態が上がらないスロースターターとして有名だが、今年のキャンプでは明らかなスロー調整に終始した。

 「はい。配慮していただけ、ゆっくりやることができました。(FA権を行使せずに残留で)いい契約を頂いているから、責任もある。しっかり調整していきたいです」

 与田監督も「雄大のことは心配はしていない。調整は任せているし、何よりも去年までの疲労をしっかりと取る方が大切だから」と一任している。

 計算に基づいた調整なのか、それとも短かった今回のシーズンオフで疲労の蓄積が解消しきれなかったのか、それは今後の投球を見るとして、もちろん開幕がすべてではない。それ以上に重要なのは勝負のかかった夏場以降に、エースがエースでいてくれるかどうか。それは非常に大切な「見どころ」である。

勝負の1点を取るために

 続いては「勝負を分ける1点を取りきれるか」だ。前回優勝時ですらそうだったのだが、中日の得点力不足は長年の懸案だ。昨シーズンの総得点429はリーグ最少。本拠地のバンテリンドームは国内屈指のピッチャーズパークのため、本塁打が出にくいことが影響している。

 それを補うのも「スピード」の強化だ。昨シーズンの33盗塁はリーグ5位。そこで与田監督は盗塁王経験者の荒木雅博コーチを三塁から一塁へ配置転換。投手のくせ分析にも長けたコーチの下、チームは「企図数150、成功100」を目標に掲げた。機動力の大幅改善に取り組んでいる。

 そうやってつくった貴重なチャンスをモノにするのがダヤン・ビシエド、高橋周平らの中軸と、代打の切り札だ。長年手薄だった代打に、球界最年長の福留孝介が加わった。強力リリーフを擁し、6回終了時にリードしていたら強かった中日も、裏を返せばリードされていたらからっきしだった。相手の勝利の方程式を崩せなかったからだ。終盤の逆転劇を演出する切り札の復帰は心強い。

根尾、石垣、石川昂、岡林……

 最後の「見どころ」は若手の突き上げだ。3年目の根尾昂を筆頭に、5年目の石垣雅海、2年目の石川昂弥、岡林勇希らナゴヤ球場で鍛えられた高卒組が着実に芽を出している。一気に葉を出し、花を咲かせ、実をつけられるか。能力のあるメンバーがそろってはいるが、それでも勝てなかったという現実もある。「大きな見どころ」を成し遂げるには、大胆な世代交代も必要なのかもしれない。

 「それぞれにレベルアップしているのは間違いない。期待しているから満足はしないけどね。激しい競争を勝ち抜いて、どんどんアピールしてくれればいい。アピールするのは大人の仕事。あざとくなんかない」

 オレを使え。もっと試合に出せ。そんな選手が与田監督は大好きだ。初志貫徹、遊撃一本で京田陽太に挑む根尾。対照的に石川、石垣は複数ポジションをこなし、チャンスの入り口を広げようとしている。コロナ禍で新外国人のマイク・ガーバーの来日が大幅に遅れ、外野が手薄なのは岡林には追い風だ。

 エースの活躍、1点にこだわる野球、そして若手の台頭。これらの「見どころ」がそろったとき、中日ドラゴンズ「10年の空白」が埋まる。

横浜DeNAベイスターズJERAセ・リーグ2020:4位

文=日比野恭三

 経営権がDeNAに移行してから10年目にあたる今シーズン、ベイスターズの展望は――正直なところ、下馬評はあまり高くない。

 周知のとおり、昨オフ、梶谷隆幸と井納翔一という投打の屋台骨がジャイアンツにFA移籍した。

 昨シーズンのリーグ覇者であるジャイアンツと、同4位に終わったベイスターズの差は12ゲーム。それに加えての戦力の移動だ。この一点だけを切り取っても、頂上までの道のりは険しいと思わざるをえない。

 また、5シーズンにわたり指揮を執ったラミレス前監督から三浦大輔新監督へと交代したほか、ベテランの退団によって33歳の大和が最年長になるほど若い集団になった。チームは過渡期にあると言え、新体制1年目にどこまでやれるのかは未知数だ。

ただ、未知数という表現には、予想をいいほうに覆す可能性も含まれる。そのための条件とは何だろうか。

打ったわりに点を取れなかった……

 昨シーズンのスタッツが、チームの課題を明らかにしている。得点の物足りなさだ。

 チーム打率はリーグ1位の.266。ホームラン135本も同1位タイ。にもかかわらず、総得点は516点で同3位止まりだった。一方、ジャイアンツはチーム打率.255(同3位)で、リーグ最多の532点を稼いだ。

 単純化して書けば、よく打ったわりに点を取れなかったのがベイスターズだった。バットで道を切り開くのが野球の基本とはいえ、接戦の試合終盤など、1点を取りに行く戦術面の選択肢の乏しさは歯がゆくもあった。

 三浦新監督も就任会見の席で、チームに必要なことを「得点力を上げること。いかにホームベースを踏むか。一番確率の良い方法を探っていきたい」と話している。

 得点が伸び悩んだ要因は複合的だが、盗塁数の差はさすがに無視できまい。80盗塁で最多だったジャイアンツ、タイガースに対し、ベイスターズは最少の31盗塁。2.5倍超の開きは大きい。

 三浦監督は春季キャンプ中の練習試合などで、選手に積極的に盗塁を試みさせている。うまく組み立てさえすれば、一つ上のステージに上がれるハシゴ。あるいは、鬼に持たせる金棒とでもいえようか。いずれにせよ、攻撃力を上げ、勝ちに近づける要素が目の前にある状況なのだから、そこにトライするのは当然だろう。

いまのところ成功率が低いが、筆者はそこまで悲観していない。昨シーズンの盗塁成功率.674はリーグ3位で、平均(.669)並みだった。走れないというより、走らなかったのだ。チームの戦略、選手の意識しだいで状況が一変する可能性はある。

梶谷の退団は競争の導火線に火をつけた

 3年前の2018年、ベイスターズはリーグ3位にあたる71盗塁をマークしている。

 この年の記録を見返すと、桑原将志が17盗塁、当時1年目の神里和毅が15盗塁など、主に外野手がよく走っていた。2017年に全試合出場を果たした桑原と、俊足を売りに入ってきたルーキーの神里、さらに梶谷や乙坂智ら、激しくポジションを争う選手たちが足でアピールした結果でもあった。

2021年のいま、その再現が起こりうるのではないか。ポジティブにいえば、梶谷の退団は競争の導火線に火をつけた。「1番センター」の座の最も近くにいるであろう神里に加え、三浦監督からの期待を背に一軍キャンプを過ごす関根大気や宮本秀明、梶谷の人的補償で加入した田中俊太らの“競走”が盗塁数を押し上げ、ひいては得点力向上に寄与することを期待したい。

 より俯瞰的に見れば、ベイスターズの浮沈のカギを握るのは「若手の台頭」に尽きると思う。

「三浦監督は昨シーズン、ファームで指揮を執った。その1年間は、自らが監督の肩書を背負う者としての流儀を形づくる時間であると同時に、次を担う選手を見極める時間でもあったはずだ。

 その結果、一軍へと明確にステップアップする段階に来ていると見定めた選手を、三浦監督は一軍のキャンプに参加させ、実戦でも多く起用している。野手では先述した関根や宮本に加え、パワーが持ち味の細川成也、強肩捕手の山本祐大ら。投手では、高卒5年目の京山将弥、その1つ年下の阪口皓亮らの名前を挙げることができる。

抜け出してくる若手がどれだけいるか

 現状、レギュラーとしての起用が見込まれる選手は、宮﨑敏郎やキャプテンの佐野恵太など、ごく一部に限られている。投手に関しても、エース格の今永昇太が手術明けで復帰時期が明確でなく、昨シーズン、不振によりクローザーの任を離れた山﨑康晃もキャンプはファームでのスタートだった。先発から抑えまで、絶対的と言える存在は数少ない。外国人選手の来日時期も不透明だ。

 この、いまだ混沌としたチーム状況の中で、“どんぐりの背比べ”ではなく、頭ひとつ抜け出してくる若手がどれだけいるか。この大チャンスをものにして一軍で羽ばたく、それだけの胆力と実力の持ち主が現れるかどうか。監督の手腕や采配といったこと以上に、そこが重要だ。

 ファーム経由でのし上がってきた選手であれ、入江大生や牧秀悟といった即戦力ルーキーであれ。

 昨シーズン、主将と4番を同時に託されながら期待以上の活躍を見せた佐野のような選手に、今年も1人、2人と続けば、おもしろくなる。

 

【注釈】Annotation

※2021年4月23日現在、セ・リーグ所属の外国人選手は全て来日しております。