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広島の「勝利の方程式」に新しい風は吹くか。ヤクルトは若手先発陣の奮起が求められる。

佐々岡監督の前でブルペン投球する広島のルーキー・栗林(左)。ヤクルトの2年目、奥川恭伸はローテ争いに割って入りたい。©KYODO
佐々岡監督の前でブルペン投球する広島のルーキー・栗林(左)。ヤクルトの2年目、奥川恭伸はローテ争いに割って入りたい。©KYODO

3月26日のJERAセントラル・リーグ開幕に向けてNumber Webでは、2021年シーズンの戦いを展望する連載をスタート。第2回は、昨季5位の広島東洋カープ、6位の東京ヤクルトスワローズのキャンプの模様から、巻き返しに向けたキーマンを探す。

広島東洋カープJERAセ・リーグ2020:5位

文=前原淳

 無観客のコザしんきんスタジアムに、新しい風が吹いている。

 2018年までの3連覇から、広島東洋カープは2年続けてBクラスに終わった。2016年の黒田博樹、2018年の新井貴浩に続き、昨季は石原慶幸が現役を引退。広島の一時代は終幕し、新たな時代が始まろうとしている。

 新しい時代には、新しい選手が現れる。

 就任2年目の佐々岡真司監督もキャンプイン前日、「新しい力も必要になってくるだろう。そこは競争になる」と新戦力を含めたチーム内競争の激化がチーム力を底上げすると期待していた。

 キャンプ序盤、最も存在感を発揮した“新戦力”は、選手ではなく、4年ぶりに復帰した河田雄祐ヘッドコーチだった。

 朝から大きな声で選手に声をかける。佐々岡監督やコーチ陣とも積極的に話をする。

 2日目の円陣で新ヘッドは選手たちにこう伝えた。

「ベースランニングで、ベースを回るときの体の角度を意識してくれ。まだ2日目だからちょっと角度をつける意識でいい。初日は(体の)慣らしもあったかもしれないけど、徐々に上げていこう」

 ベースランニングを、単なるウォーミングアップの延長では終わらせない。第1クール最終日には、二塁から本塁を狙う走塁時の三塁ベースを蹴る位置や角度を細かく指示した。練習メニューには「帰塁」や「スライディング」まで盛り込まれている。

「タナキク」コンビ復活へ

 選手が当然分かっているようなことでも、あえて細かく説明する。言葉で伝えることによって意識を高め、実践させることで理解を深め、細かく言うことで徹底を生む。

 菊池涼介は河田ヘッド復帰に「若い選手は初めてで、そうなのかと思うところがいっぱいあると思う。僕らは思い返すというか、こういう野球をやっていたよなと懐かしかったり。いい影響、意識改革ができているんじゃないですか」と絶大な効果を感じている。

 広島だけでなく、西武などでもチームに叩き込んできた機動力は、一つひとつの意識を徹底するところから始まる。3連覇したカープの下地にも、この凡事徹底があった。

 野手陣は仕上がりの早さが目立つ。中でも田中広輔は、2019年の右膝手術の影響が完全に払拭されたようだ。動きに切れがあり、打撃でも土台がしっかり安定している。加えて、選手会長として声を出すなど盛り上げ役も担っている。

 河田ヘッドは菊池涼介との「タナキク」コンビの復活に期待する。

「2人には『すべてに対して見本になって、ベンチはどういう気持ちでサインを出すのかというところを、改めて分かって欲しい』と。1日1回、チーム打撃のことを考える時間をつくってくれという話をした。彼らが1、2番に座ってくれればベスト。僕はそう思います」

 昨年11月に右足首を手術し、二軍で調整中の西川龍馬も開幕には間に合う見通し。昨季リーグ2位のチーム打率を残した打線と、“新戦力”河田ヘッドによって磨かれた機動力によって、得点力はさらに増すだろう。

「勝利の方程式」を確立させたい

 広島にとって、最大の課題は投手陣にある。昨季のチーム防御率4.06は順位と同じリーグ5位だった。特にリーグワーストを記録した救援防御率4.64の改善は最重要課題。指揮官も「後ろの重要性は考えないと。特に今年のキャンプのテーマになると思う」と話していた。

 昨季は開幕してしばらく勝ちパターンを確立できず、黒星を先行させただけに、開幕までには「勝利の方程式」を確立させたいところだ。3連覇した2018年はチーム防御率4.12だったが、救援防御率が3.87(リーグ2位)だった。

 ただ、抑え最有力のヘロニモ・フランスアが新型コロナウイルス感染で来日が遅れ、新外国人カイル・バードは来日めどが立っていない(2月15日時点)。フランスアは2月11日にキャンプに合流したものの、バードは開幕に間に合いそうになく、勝ちパターンの輪郭はまだ見えていない。

 指揮官は先発からの配置転換も辞さない。

「先発がダメだから、6番手から外れたからではなく、後ろの適性があれば、リリーフに回すことも考えられる」

新加入4投手が新しい風を吹かせる

 塹江敦哉やケムナ誠ら、昨季勝ちパターンを担った選手だけでない。昨秋ドラフトで獲得したドラフト1位の栗林良吏、同2位・森浦大輔、同3位・大道温貴の即戦力3投手が一軍キャンプに参加。さらに昨年9月末に育成契約を結んだ、ドミニカのカープアカデミー出身のロベルト・コルニエルと新しい顔ぶれもいる。

 昨季ローテーションを守った遠藤淳志は「ドラフトでたくさん投手を取ったし、(高橋)昂也さんも帰ってくる。アピール合戦になると思う。(競争が)厳しくなると思うので、自分を出して、俺が俺がという気持ちを出していきたい」と危機感を口にしていた。

 新戦力の効果か、調整遅れで悪目立ちする投手はいない。横山竜士投手コーチも「選手たちはしっかりオフを過ごしてきてくれた」と始まったばかりのチーム内競争に目を細めた。

 先に挙げた新人3投手とコルニエルは、いずれも真っすぐに力があり、先発、中継ぎどちらもできる。首脳陣にとっては選手個々の仕上がりや構成によって、起用の幅が広がってくるのではないだろうか。

「勝利の方程式」確立という答えを探しながら、新しいシーズンの開幕に備える。広島に吹く新しい風は、カープを上位へと押し上げる追い風となるに違いない。

東京ヤクルトスワローズJERAセ・リーグ2020:6位

文=生島淳

 昨季はJERAセントラル・リーグの最下位。

 8月7日の時点では2位に浮上したが、シーズンが終わってみると、それが東京ヤクルトスワローズの現実だった。

 それでも11月10日に神宮球場で行われたレギュラーシーズン最終戦では、先発マウンドにルーキーの奥川恭伸が立った。敗戦投手となったものの、試合後のセレモニーでは高津臣吾監督が奥川にスピーチを促し、その堂々とした話しっぷりに、スワローズファンは2021年への期待を抱いた――。

 1月31日、今季のキャンプインを前に、高津監督は絵馬にこうしたためた。

「勇往邁進」

 コロナ禍のなかで困難に立ち向かい、強い気持ちを持って前進していけるように、という思いを込めたという。高津監督は、選手たちから旺盛な競争心が湧き上がってくることを望んでいる。

「僕も含めて厳しいキャンプを送っていきたいと思います。限られたメンバーで、限られた枠を取りにいってほしい。そういう競争があってこそチーム力が上がるものでしょう。今、スワローズに一番大事なことは、激しくレベルの高い競争。そういうところはしっかり煽りながらキャンプで取り組んでいきたいです」

 特に競争が望まれているのは先発投手陣だ。

 2年連続でチーム防御率は最下位。先発が序盤で打ち込まれて試合を作ることができず、ブルペンに負担をかけてしまったことは明らかだった。

「ヤクルトの未来は原、高橋、寺島に」

 再建が望まれる先発陣の柱は、言うまでもなく小川泰弘。昨季は8月15日にノーヒットノーランを達成、5年ぶりの2ケタ勝利となる10勝をマークした。シーズン終了後にFA権を獲得したが、ヤクルトと新たに4年契約を交わした。

 しかし、小川頼みでは目標とするAクラス入りには手が届かない。若手先発陣が競り合わなければ、他球団には対抗できないだろう。

 高津監督が二軍監督時代、口癖のように言っていたことがある。

「ヤクルトの未来は、原樹理、高橋奎二、寺島成輝にかかってます」

 今季、原、高橋はともに入団6年目、寺島は5年目を迎え、そろそろこれまでの経験を実らせたい。シーズンを通して安定した投球ができるかどうか、が3人の課題だろう。

 さらに2年目を迎える奥川と、慶応義塾大学からドラフト1位で入団した木澤尚文も、ともにキャンプ一軍スタートで、高津監督の期待の高さがうかがえる。

「大事な戦力であるのは間違いないです。チームを強くしてくれる選手の1人として、しっかり調整して勝つための一員でいてほしい」

 小川を軸に、20代前半の投手から1人と言わず2人、3人とシーズンを通してローテーションを守れる投手が出てくれば、スワローズが飛翔するチャンスは膨らむ。

伊藤コーチをMVPに選んだ理由

 キャンプの第1クールが終わり、高津監督が投手陣のMVPに挙げたのが、なんと新任の伊藤智仁投手コーチだった。伊藤コーチは寺島をはじめ、若手に対して積極的に指導に当たっていたが、高津監督は伊藤コーチをMVPに選んだ理由を、「すごく的確に、しかも分かりやすく選手と話してるのが印象的だった。石井(弘寿)コーチとタッグを組んで投手を再建しようという気持ちが表れていたので」と話している。

 さらに、2月5日から11日までは、1990年代に高津、伊藤両投手とバッテリーを組んでいた古田敦也元監督が、臨時コーチとしてバッテリーの指導に当たった。実に14年ぶりの現場での指導である。ただ、古田臨時コーチは古巣の現状に厳しい見方を隠さなかった。

「投手陣は正直言うと物足りないし、完成度が低い。まだまだ足りない部分があるのは結果が示していますから」

 捕手陣に対しては、一軍スタートの4人、中村悠平、西田明央、松本直樹、古賀優大にキャッチングから指導した。

「今でいうと中村や西田は一歩リードしているのは間違いないでしょう。ただ、その一歩は本人が思っているより小さい一歩。僕には経験値があるので、バッテリーでどうやって相手を抑えていくか、アイデアやヒントを捕手陣に与えたいので、役立ててほしいですね」

新キャプテン山田哲人が盛り上げる

 一方で、打線の活性化も望まれる。昨季は2番・山田哲人、3番・青木宣親、4番・村上宗隆の並びはリーグでも迫力があったが、1番、5番が固定できず、下位打線からのチャンスメイクが少ないなど、「線」としてのつながりが課題だった。

 1番として期待されるのは、抜群の運動能力を誇る塩見泰隆。また、打線を機能させる人材として、時に驚くべきパワーを発揮する廣岡大志、筋骨隆々の中山翔太らの台頭が待ち遠しい。

 高津監督は、第2クールから練習試合を組み、2月11日からは中日との練習試合で投手陣と同様、若手野手にも競争を促す予定だ。

「最初の試合から評価されていることをしっかり意識してほしいですね。ポジションはつかみ取るものですから。もっと活発に、激しく、目の色を変えて挑んでくれることを期待してます」

 そして、高津監督がチームリーダーとして期待を寄せるのが、新たに7年契約を結び、自らキャプテンを志願した山田だ。高津監督は、第1クールの野手陣のMVPに山田を挙げ、評価した。

「第1クール、すごく良かった。山田は先頭で引っ張るタイプではないけれど、自覚もありつつ、声も出ていたからね」

 首脳陣からだけではなく、キャプテンとなった山田が若手を盛り上げていくことができれば、スワローズの希望は膨らむはずだ。

 

【注釈】Annotation

※2021年4月23日現在、セ・リーグ所属の外国人選手は全て来日しております。